こんにちは、HARITAの設計室です。連載「コンセント設備の設計マニュアル」第5回は施工・検査第4回までで、コンセントの計画は図面の上では完成しました。ここから先は、その図面が本当に壁の中で形になるかという話です。

壁の中は、ボードが閉まった瞬間に見えなくなります。いわばタイムカプセル。閉める前の30分で手を抜くと、その付けを払うのは10年後に壁を壊す誰かです。今回の合言葉は「締めて・測って・写真に残す」。この3つが揃っていれば、引渡し後に慌てることはほとんどありません。

「施工は職人さんの仕事では?」と思うかもしれません。ですが、おさまらない図面を描いたのは設計です。現場で何が起きるかを知っている人の図面は、驚くほど手戻りが少なくなります。設計者こそ、この回を読んでおいてください。

今回の全体像 ― 図面が壁の中で形になるまで

図面が壁の中で形になるまで1おさまりボックスの位置と深さを決める墨出し〜仕込み2結線送り配線と締付けトルク器具付け3検査極性・接地・絶縁を測って記録自主検査〜竣工4予防発熱・ゆるみの芽を先に摘む引渡し後までボードが閉まる前が勝負。閉じたあとの手直しは、ぜんぶ「壊してから」になるHARITAの設計室

コンセントの施工は、大きく4つの関門に分かれます。①おさまり → ②結線 → ③検査 → ④予防。①と②はボードが閉まる前、③は電気を流してから、④は引渡し後まで続きます。現場の流れそのものは 新人講座 施工実務編⑤ 内装〜天井内配線の実際 にまとめてあるので、全体感が薄い人はそちらを先にどうぞ。

① ボックスのおさまり ― 壁の中は「場所の取り合い」

図面では点でしかないコンセントも、壁の中では幅・深さ・向きを持った箱です。そして壁の中には、間柱・断熱材・給水管・ダクトが先に住んでいます。おさまりとは、その場所取りに勝つことです。

壁の中の場所取り ― ボックスのおさまり間柱FL(床仕上げ面)送りへアウトレットBOXFL+250目安深さは「電線の量」で決まる送り配線が増えるほど詰まる。迷ったら深型へボックス内の余長は15cm前後器具を手前に引き出して結線・点検できる長さを残す区画・遮音壁の貫通は別ルール背中合わせ配置は避ける。処理は特記仕様書を確認HARITAの設計室

設計側が意識しておきたいのは、次の3点です。

  • 深さ:ボックスの容量は「入る電線の本数」で決まります。送り配線が集まる場所や、接地線が加わる場所は浅型だと蓋が閉まりません。集約点は最初から深型で描いておくと現場が助かります
  • 取付高さ:一般的な床上コンセントはFL+250mm前後、机上や厨房のカウンター上はFL+1,100〜1,200mm前後が目安。ただしこれは目安で、実際は特記仕様書と施主基準が優先です
  • 他設備との干渉:給排水管・ダクト・耐力壁の筋かいは動かせません。動かせるのは電気側です。だからこそ「この位置でないと困る」コンセントは図面に理由を書いておく

ボックスから先の配管サイズで迷ったら、セコサポの 電線管サイズ選定ツールプルボックスサイズ選定ツール が使えます。占有率の計算を手でやる時代は終わりました。躯体に仕込む段階の話は 新人講座 施工実務編③ 躯体工事の仕込み が詳しいです。

② 結線のきほん ― 送り配線と「締める」という仕事

第3回で決めた回路は、現場では送り配線という形で実現します。分電盤から出た1本のケーブルが、1個目のコンセントへ入り、そこから2個目、3個目へ渡っていく。回路図の1本の線が、こうして壁の中で数珠つなぎになります。

送り配線 ― 1回路が数珠つなぎになる幹線送り送り分電盤1個目2個目3個目極性を守る白(W)は接地側。端子のW表示へ逆に入れても点くから怖いストリップ長を守る速結端子は器具のゲージ通りに剥く長すぎ=銅線露出/短すぎ=抜け最後まで締めるねじ端子は規定トルクで。増し締めもゆるみは数年後に発熱で返ってくるHARITAの設計室

結線でいちばん怖いのは、間違っていても一見動いてしまうことです。極性を逆に結線してもコンセントは使えますし、ねじが半分しか締まっていなくても最初は問題なく通電します。だから検査と記録が要ります。

複線図で結線のイメージを固めたい人は、第二種電気工事士の候補問題が最高の教材です。接地極付コンセントは 候補問題No.3、露出形コンセントと3路は 候補問題No.6、EETコンセントは 候補問題No.9 をどうぞ。器具付けと盤側の作業は 新人講座 施工実務編⑦ 盤の据付・結線と器具付け にまとめています。

③ 竣工検査 ― 「測って記録する」5つのチェック

検査は、粗探しではなく引渡しの根拠づくりです。あとで何か起きたときに「ここまでは確かめてある」と言えるかどうか。コンセントまわりで最低限見ておきたいのは、次の5つです。

竣工・自主検査チェックリスト極性は合っているか検電器・極性チェッカーで全数。W側=接地側接地は生きているかE・EETは導通と接地抵抗を確認して数値を残す絶縁抵抗は基準を満たすか回路ごとに測定。基準値は電圧区分で異なる端子は規定トルクで締まっているか増し締めとマーキング。ゆるみ止めの印を付けるプレートの仕上がりはどうか水平・段差・傷。施主が最初に見るのはここ測った値は必ず記録。写真は「閉める前」に撮るHARITAの設計室

測定値の基準や試験の順番は 新人講座 施工実務編⑧ 竣工前の試験・測定 にまとめてあります。送電は「合格」してから――この順番だけは崩さないでください。

検査で撮った写真に、その場で指示や寸法を書き込みたいときは 図面PDFマークアップツール が便利です。ブラウザで開いて注釈を入れ、そのまま共有できます。

④ トラブルの芽 ― 3兄弟を先に摘んでおく

コンセントの事故は、ある日突然起きるのではなく何年もかけて育ちます。育つ前に摘めるものは、設計と施工の段階でほとんど摘めます。代表的な3つを覚えてください。

トラブルの芽 3兄弟発熱原因:容量オーバー・タコ足接触面積の不足対策:専用回路と回路分割大物家電は1台1回路が基本トラッキング原因:刃の間のホコリ+湿気挿しっぱなしの家具裏対策:位置と器具の選定家具裏を避ける・防塵形を使うゆるみ・抜け原因:締付け不足と経年抜き差しでの刃受けの疲れ対策:規定トルクと更新器具は10年前後で交換を案内サインは「におい・焦げ跡・熱」。1つでも出たら、まず使用を止めるHARITAの設計室

実際に「熱い」「焦げ臭い」と言われたときの危険度の見分け方と対処は コンセントが熱い・焦げ臭いときの危険度と対処 にまとめています。技術的な補足として、施主から相談を受けたときにそのまま案内できる内容です。あわせて、増設をDIYでやろうとする施主への説明には コンセントの増設はDIYできる?無資格工事の範囲 が役に立ちます。

まとめ

  • おさまりは「深さ・高さ・干渉」の3点。集約点は最初から深型で描いておく
  • 取付高さはFL+250mm前後が目安。ただし特記仕様書と施主基準が優先
  • 結線は極性・ストリップ長・締付けの3つ。間違っていても最初は動くから怖い
  • 検査は引渡しの根拠づくり。極性・接地・絶縁・トルク・仕上げを測って記録する
  • トラブル3兄弟は発熱・トラッキング・ゆるみ。設計と施工の段階でほとんど摘める

よくある質問

Q1. 取付高さはFL+250mmでないとダメですか?
A. 決まりではなく目安です。高齢者施設やバリアフリー配慮の建物では、かがまずに抜き差しできるFL+400mm程度にすることもあります。最終的には特記仕様書と施主基準が優先です。

Q2. 送り配線は何個までつないでいいですか?
A. 「何個まで」という数字が単独であるわけではありません。回路の容量(第3回で決めた分割)、電圧降下、そしてボックスの容量――この3つの制約のうち、いちばん先に当たったところが上限です。集約点のボックスが閉まらないなら、それがサインです。

Q3. 竣工写真はどこまで撮ればいいですか?
A. 判断基準はシンプルで、見えなくなる部分は全部です。ボックス内の結線、接地の接続、区画の貫通処理。撮り直しがきかない瞬間なので、迷ったら撮る。撮りすぎて困ったことは一度もありません。

次回予告

次回はいよいよ最終回、第6回「図面化と拾い・積算」。ここまで決めてきたことを、あとから誰でも拾える図面に落とし込みます。コンセント図と回路表の書き分け、拾い出しから積算までの流れ、そして連載全体の総まとめ。連載の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

→ 公開しました:第6回・最終回 図面化と拾い・積算 ―「あとで拾える図面」で締めくくる

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