こんにちは、HARITAの設計室です。連載「幹線設備の設計マニュアル」もいよいよ最終回、第6回は分電盤へ落とす第5回までで、サイズも保護も決まりました。残る仕事は、それを盤の中に並べ、図面にすることです。

今回の合言葉は「盤は“設備の目次”」。盤を開けた人、図面を受け取った人が、そこで全体を読めるかどうか。設計の値打ちは、最後にここで決まります。

今回の全体像

決めたものを、盤と図面に落とす1盤の構成主幹・分岐・予備中身を決める2漏電遮断器人を守る保護設置と誤動作対策3感震・動力地震対策と主幹置く/置かないの判断4幹線系統図全体を1枚に設備の目次をつくる盤は「設備の目次」。1枚で全体が読める図面にするHARITAの設計室

① 分電盤の構成 ― 主幹・分岐・予備

盤の中身は3つの要素でできています。主幹(その盤ぜんぶを守る)、分岐(回路ごと)、そして予備

主幹・分岐・予備主幹L-1事務室 電灯L-2会議室 電灯L-3コンセント AL-4コンセント BL-5空調(専用)予備(あけておく)分岐ブレーカー主幹は「盤ぜんぶ」を守る第2回で出した合成容量から決める分岐は「用途がわかる並び」に系統ごと・階ごとに固めて、番号を振る予備は必ず残す増設は「あるかも」ではなく「必ず起きる」盤を開けた人が、どれが何かを一目で分かる並びにするHARITAの設計室

主幹の容量は、第2回で出した合成容量から決めます。分岐は、系統ごと・階ごとに固めて並べるのがコツです。ばらばらに並べると、盤を開けた人が探せません。照明編の第4回でやった「スイッチの並び順を器具の並びと一致させる」と、まったく同じ発想です。

そして予備回路。ここまで連載を通じて何度も書いてきましたが、増設は「あるかもしれない」ではなく「必ず起きる」ものです。盤に空きがあるかどうかで、10年後の工事費が桁で変わります。盤の構成と計画の考え方は 分電盤の構成と計画指針 にまとめてあります。

② 漏電遮断器 ― 人を守る保護

第5回で扱った過電流遮断器は電線を守るものでした。もうひとつ、を守る保護があります。漏電遮断器(ELCB)です。

漏電遮断器は「人」を守る分電盤ELCB機器漏電人体を通って大地へ流れる誤動作の主な原因絶縁の低下古い機器・湿気ノイズ・高調波インバータ機器対地静電容量長い配線・多数の機器「よく落ちるから外す」は最悪の対処。原因を切り分けるHARITAの設計室

絶縁が弱った機器に人が触れると、電気は人体を通って大地へ流れます。行きと帰りの電流に差が出るので、それを検知して切る ― これが漏電遮断器の仕組みです。設置基準と選定は 漏電遮断器[ELCB]の設置基準と選定方法 にまとめてあります。

実務でよく相談されるのが誤動作です。絶縁の低下、インバータ機器のノイズ、長い配線による対地静電容量。原因はいくつかあり、切り分け方も違います。詳しくは ELCB(漏電遮断器)が誤動作する主な原因とは? をどうぞ。

ここで絶対にやってはいけないのが、「よく落ちるから」と感度を鈍らせたり、外したりすることです。守っているのは電線ではなく人です。

③ 感震ブレーカーと動力盤の主幹

盤まわりで「置くか置かないか」を判断するものが2つあります。

置く/置かないを判断する2つ感震ブレーカー揺れを検知して電気を止める目的は地震後の通電火災を防ぐこと注意:切れて困る設備が同じ盤にないか非常用・医療用などは分けて考える動力盤の主幹主幹を置くか、置かないか分岐の数・容量・保守のしやすさで決まる置くと盤内で電源を切れる保守のしやすさは、この一点で変わるHARITAの設計室

感震ブレーカーは、地震の揺れを検知して電気を止める装置です。目的は地震後の通電火災を防ぐこと。機能と必要性は 感震ブレーカーの必要性と機能 にまとめてあります。ただし注意点があって、切れて困る設備が同じ盤にないかは必ず確認してください。照明編の第6回でやった非常照明のように、止まってはいけないものは分けて考えます。

動力盤の主幹は、置くか置かないかで保守のしやすさが変わります。主幹があれば盤内で電源を落とせますが、なければ上流まで戻ることになります。判断基準は 動力盤主幹の設置基準と有無の判断方法 にまとまっています。

動力側の分岐ブレーカーとケーブルの選定は、電灯とは考え方が違います。動力負荷の種類とブレーカーサイズの簡易算出方法、根拠は 動力負荷のブレーカーサイズの選定根拠、早見表は 動力ブレーカー・ケーブルサイズ選定早見表【内線規程3705-3表】 をご覧ください。

④ 幹線系統図 ― 全体を1枚に畳む

最後に図面です。幹線の設計は、最終的に幹線系統図という1枚にまとまります。

幹線系統図 ― 全体を1枚に畳む受電・主幹1F 電灯盤CV 38sq×3CL=42m2F 電灯盤CV 22sq×3CL=56m動力盤CV 60sq×4CL=38m1本ごとに「サイズ・条数・こう長」を書き添えるこの1枚があれば、拾いも改修も、あとから来た人ができる系統図は「設備の目次」。書いた人がいなくても読めるようにHARITAの設計室

受電から各盤までを樹形に描き、1本ごとにケーブルのサイズ・条数・こう長を書き添えます。これがあると、拾い出しも改修も、あとから来た人ができます。逆に書いていないと、そのたびに現場を測ることになります。

コンセント編の第6回で書いた「描いた人がいなくても拾える図面」が、そのまま当てはまります。図面の種類と役割は 新人講座 第4回 電気設備図面の種類 をどうぞ。

⑤ 連載の総まとめ ― 幹線設計の6ステップ

幹線設計の6ステップ(総まとめ)1系統計画盤を負荷の重心へ。用途・階・重要度で分ける2負荷の集計全部足してから、需要率と不等率で割り引く3サイズ選定IB≦In≦Iw。許容電流は発熱の限界4電圧降下こう長は実際に通る長さ。まずルートを疑う5保護と分岐上流ほど遅く・大きく。分岐は距離のルール6分電盤と系統図主幹・分岐・予備。1枚で全体が読める図面に上流を決めてから下流へ。順番を守れば、やり直しは起きないHARITAの設計室

各ステップの詳細は、第1回 全体フローと系統計画第2回 負荷容量の集計第3回 幹線サイズの選定第4回 電圧降下の検証第5回 保護と幹線分岐 に戻ってご確認ください。

まとめ

  • 盤は主幹・分岐・予備。分岐は系統ごと・階ごとに固めて番号を振る
  • 予備回路は必ず残す。空きの有無で10年後の工事費が変わる
  • 過電流遮断器は電線を、漏電遮断器は人を守る
  • ELCBが落ちるときは原因を切り分ける。感度を鈍らせて済ませない
  • 感震ブレーカーは通電火災対策。切れて困る設備が同じ盤にないか確認する
  • 幹線系統図には、1本ごとにサイズ・条数・こう長を書く

よくある質問

Q1. 予備回路は、どのくらい残せばいいですか?
A. 一律の数字はありませんが、判断材料は「その建物で用途変更が起きそうか」です。テナントビルや工場は厚めに、専用住宅は薄めに。盤の大きさは予備の数で決まるので、盤を置くスペースとセットで考えてください。

Q2. 漏電遮断器は、どの回路にも付ければ安心ですか?
A. 安全側ではありますが、付ける位置と感度の設計が要ります。上位と下位の両方に付ければ、漏電したときにどちらが先に切れるかという協調の問題が出ます。第5回の保護協調と同じ話が、漏電側にもあると考えてください。

Q3. 系統図に、こう長まで書く必要はありますか?
A. 書いてください。こう長は第4回でやったとおり電圧降下の前提そのものなので、あとから条件が変わったときに再検証できるかどうかが、この1行で決まります。増設の相談が来たときに「元の設計でどこまで見ていたか」がわかる図面は、それだけで価値があります。

連載を終えて

全6回、おつかれさまでした。幹線は、ふだん誰の目にも触れない設備です。天井裏やEPSの中を静かに通っていて、うまくいっているかぎり誰も気づきません。気づかれないことが、いちばんうまくいっている状態。そういう設備を設計する仕事です。

他の工事項目の計画ステップは、ハブページ 設計・施工マニュアル にまとめてあります。すでに コンセント設備の設計マニュアル(全6回)照明設備の設計マニュアル(全6回)高圧受変電設備の設計マニュアル が完結しています。上流から下流まで、通して読めるようになりました。

今後は、ハブの「(準備中)」に残っている電力会社との協議・申込み医用接地などの特殊な接地LAN・テレビ共聴・放送設備を埋めていく予定です。次に取り上げてほしいテーマがあれば、ぜひ教えてください。

次に読むならこれ【弱電設備の設計マニュアル③】LAN・電話 ― 情報コンセントとMDF/IDF設計マニュアル