こんにちは、HARITAの設計室です。

引込・受電設備の設計マニュアル、第3回です。前回で契約電力の想定まで来ました。今回はどうやって電気を建物まで持ってくるか――引込方式とルートの話です。

この工程でよくある失敗は、敷地の入口ばかり見て決めてしまうことです。道路に面したところに引込柱を立てればいい、と思って進めると、あとから「受電設備の位置が変わったので管路も引き直し」になります。

架空か、地中か

架空か、地中か架空引込むいているところ・工事が早く、コストを抑えやすい・断線しても復旧が早い・敷地に余裕がない場合も通しやすい気をつけるところ・電柱と架空線が見える・車両動線・建築の意匠と当たる地中引込管路・ハンドホールむいているところ・外観がすっきりする・風水害や飛来物に強い気をつけるところ・管路・ハンドホールの用意が要る・コストと工期がかかる・更新時の入れ替えが大変見た目とコストだけで決めない。更新と復旧まで見るHARITAの設計室

引込方式の最初の分かれ道は、架空引込地中引込かです。

架空引込は、電柱から空中を通して建物まで引きます。工事が早く、コストを抑えやすい。断線したときの復旧も早い。敷地に余裕がなくても通しやすいという利点があります。

地中引込は、管路を通して地面の下を通します。外観がすっきりしますし、台風や飛来物の影響を受けません。そのかわり、管路とハンドホールを用意する必要があり、コストと工期がかかります。

見落とされやすいのが更新のしやすさです。ケーブルには寿命があるので、いつかは入れ替えます。地中の場合、管路の設計が悪いと入れ替えが極端に難しくなります。逆に、管路をきちんと設計しておけば、その後の更新はむしろ楽になります。

決めるのは設計者だけではない
引込方式は、建築の意匠、敷地の使い方、電力会社の設備状況の3つで決まります。「地中にしたい」と思っても、その道路の配電線が架空だけなら地中引込にできないこともあります。早い段階で電力会社に相談するのが結局いちばん早い、というのが実感です。

「引込線」と「引込口配線」は別もの

「引込線」と「引込口配線」は別もの電柱引込線取付点引込口受電設備引込線電力会社の工事引込口配線需要家側の工事ここが区分点どこまでが電力会社の工事か、最初に確認する(電力会社ごとに運用が違う)HARITAの設計室

用語をひとつ整理しておきます。似ていますが、区分が違います。

  • 引込線:電柱から引込線取付点までの部分。一般に電力会社の工事範囲です。
  • 引込口配線:引込線取付点から引込口を経て、建物内の受電設備までの部分。需要家側の工事です。

新人のうちは、この2つをまとめて「引込」と呼んでしまいがちです。ところが誰が工事して、誰が費用を持つかがここで変わります。見積りにも工程にも効いてくるので、最初に押さえておくべき区分です。

なお、どこを取付点にするか、どこまでが電力会社の負担かは、電力会社ごとに運用が違います。一般論で決めず、その案件の供給条件で確認してください。

区分と手順の全体像は 引込設備の設計手順、用語の整理は 電気設備の基本知識 #019 引込線・引込口配線 が参考になります。

高圧ケーブルは、4つをセットで決める

高圧ケーブルは、4つをセットで決める1サイズ許容電流短絡容量で決まる2保護管外傷から守る。占積率も見る3曲げ半径曲げすぎると絶縁体を傷める4敷設方法管路・直埋・ラック・ピットケーブルは「通る」だけでなく「入る・曲がる」必要があるHARITAの設計室

高圧受電の場合、引込に使うのは高圧ケーブルです。決めることは4つあります。

この4つは互いに縛り合っています。サイズを太くすれば保護管も大きくなり、曲げ半径も大きくなり、ハンドホールの寸法まで変わる。どれか1つだけを後から変えることはできません。

「電線は通ればいい」ではなく、入る・曲がる・引けるところまでセットで考える。ここが幹線設計との大きな違いです。

他の埋設物との離隔も忘れないでください。低圧・弱電・水道管との距離基準は 高圧ケーブルの離隔距離一覧 に、電線路としての施設基準は 内線規程【020】構内電線路の施設 にまとめています。

止まると困る度合いで、引込数が決まる

止まると困る度合いで、引込数が決まる1引込1系統だけいちばん単純供給の信頼度2引込(本線予備線)通常は本線、事故時に予備線へ切替で復旧できる供給の信頼度ループ受電両方向から供給を受ける停電時間をさらに短く供給の信頼度信頼度が上がるほど、費用も敷地も設備も増えるHARITAの設計室

引込は1系統とはかぎりません。

1引込がいちばん単純で、多くの建物はこれです。2引込(本線予備線)は、通常は本線から受電し、事故時に予備線へ切り替えます。ループ受電は両方向から供給を受ける方式で、停電時間をさらに短くできます。

判断の軸は「止まると何が困るか」です。データセンター、病院、24時間稼働の工場のように、停電が事業そのものを止めてしまう建物では、複数引込が検討対象になります。

ただし、信頼度を上げるほど費用も敷地も設備も増えます。また複数引込は電力会社側の設備状況に左右されるので、希望すれば必ず選べるものでもありません。ここも早めの相談が要ります。

定義と対策の詳細は 電力の1引込・2引込の定義と対策方法 にあります。

ルートは、建物の入口から逆に引く

ルートは、建物の入口から逆に引く道路敷地建物受電設備・EPS1234引込位置ハンドホール管路ルート建物への貫通位置受電設備の位置が決まらないと、引込ルートは決められないHARITAの設計室

今回の合言葉です。引込ルートは、道路側から順に決めるのではなく、建物側から逆にたどると手戻りが減ります。

理由は単純で、いちばん動かしにくいのが受電設備の位置だからです。キュービクルの置き場所、電気室の位置、EPSの立ち上がり。ここが決まらないうちに引込位置を先に決めてしまうと、受電設備が動いた瞬間にルート全体が破綻します。

  • ① 引込位置 道路のどこから敷地に入るか。電力会社の設備状況で決まります。
  • ② ハンドホール 地中の場合、曲がるところ・引き入れるところに必要です。
  • ③ 管路ルート 敷地内の他の埋設物、将来の掘削、植栽や車路を避けて通します。
  • ④ 建物への貫通位置 構造と防水に関わるので、建築との調整事項になります。

この4点のうち、①は電力会社、③④は建築・構造との調整です。電気設計だけで完結しないので、決まったら早めに図面に落として共有してください。

とくに④の貫通位置は、あとから「そこには梁がある」「防水層を切れない」となりやすいところです。

まとめ ― 引込は、敷地の入口ではなく建物の入口で決まる

  • 架空か地中かは、コストと意匠だけでなく更新と復旧まで見て決める
  • 引込線(電力会社)と引込口配線(需要家)は工事区分が違う。運用は電力会社ごとに確認
  • 高圧ケーブルはサイズ・保護管・曲げ半径・敷設方法の4つがセット。1つだけ後から変えられない
  • 引込数は「止まると何が困るか」で決まる。ただし電力会社側の設備状況にも左右される
  • ルートは受電設備の位置から逆にたどる。①引込位置 ②ハンドホール ③管路ルート ④貫通位置
今回の合言葉
引込は、敷地の入口ではなく建物の入口で決まる。
いちばん動かしにくいところから、逆に引いてください。

よくある質問

Q1. 架空と地中、どちらが正解ということはありますか?

ありません。敷地条件・意匠要求・コスト・その道路の配電線の状況で決まります。ひとつだけ言えるのは、地中を選ぶなら管路の設計に手を抜かないことです。将来の入れ替えができない管路は、20年後に大きな問題になります。

Q2. ハンドホールはどこに置けばいいですか?

ケーブルを引き入れる作業ができる位置、つまり曲がるところ長い直線の途中が基本です。引張張力と曲げ半径の制約から必要間隔が決まります。加えて、車が乗る場所なら蓋の耐荷重、植栽や将来の掘削とぶつからないか、点検で開けられるかも確認してください。

Q3. 引込ルートは実施設計で決めればいいですか?

遅すぎます。引込位置は電力会社との協議事項で、受電設備の位置は建築計画そのものに関わります。基本設計の段階で当たりをつけて、電力会社に事前相談しておくのが安全です。この話は第5回で詳しく扱います。

次回予告

第4回は「責任分界点とPAS・UGS」です。責任分界点と財産分界点はどう違うのか。PASのSOG制御は何をしているのか。そして波及事故とは、実際に何が起きることなのか。

合言葉は「分界点の先で起こしたことは、こちらの責任になる」。→ 第4回 責任分界点とPAS・UGS を公開しました。

次に読むならこれ【引込・受電設備の設計マニュアル④】責任分界点とPAS・UGS ― 分界点の先で起こしたことは、こちらの責任になる設計マニュアル