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家の中には、照明やコンセントのほかに、もう1種類の電気の線が通っています。インターネットのLAN、テレビのアンテナ線、玄関のインターホン。こうした情報を運ぶ電気の設備を、まとめて弱電と呼びます。この記事では、弱電のしくみと図面の記号、家の中の置き場所を、使っている場面の動く図解でほどきます。コンセントや分電盤と並ぶ、超基本の10本目です。

結論

弱電は情報を運ぶ電気の設備です。LANは光回線から各部屋へ、テレビはアンテナから分けて、インターホンは玄関と居間を細い線でつなぎます。図面では丸の中身で見分け、規格が変わる前提で空配管を通しておきます。

  • 強電は電力、弱電は情報。効くのは距離とノイズ
  • ルーターは金属の箱の外へ。ケーブルはCat6A
  • テレビの電波は、分けるたびに弱くなる
  • 黒丸は電話、縦長の黒はLAN、二重丸はテレビ
この記事で押さえる5つのこと
項目を押すと、その章へ飛びます。図はすべて使っている場面の動く図解で、押すと大きく見られます。

この図の読み方

くり返し動きます。左から、もの・記号・用途の順です。

  1. もの:LAN・テレビ・インターホンは情報を運ぶ
  2. 記号:丸の中身で電話・LAN・テレビを見分ける
  3. 用途:ネット・テレビ・呼び出し・防犯カメラ

動く図解で学ぶ電気設備弱電設備の動く図解6本を、まとめて見られます見る →

弱電とは ― 強電は電力、弱電は情報

電気の設備は、大きく2つに分かれます。照明やコンセント、エアコンのように電力を運んで機械を動かすのが強電。LANや電話、テレビ、インターホンのように情報を運ぶのが弱電です。弱電の線に流れる電気はとても小さく、線も細くなります。

強電と弱電

左は電球を光らせる強電、右はテレビに映像を届ける弱電です。

  1. 強電は太い線で電力を運ぶ
  2. 弱電は細い線で情報を運ぶ
  3. 弱電は数年で規格の世代が替わる
たとえるなら
強電は「荷物を運ぶトラック」、弱電は「手紙を運ぶ郵便」
トラック(強電)は重い荷物(電力)を運ぶので、太くて丈夫な道が要ります。郵便(弱電)が運ぶのは手紙(情報)なので道は細くてかまいませんが、遠すぎたり途中で汚れたり(ノイズ)すると、内容が正しく届きません。
くらべる点 強電 弱電
運ぶもの 電力 情報・信号
例 照明・コンセント・エアコン LAN・テレビ・インターホン・電話
効いてくるもの 電流(線の太さ) 距離とノイズ
入れ替えの周期 数十年 数年〜十年で世代交代
弱電の配線は、あとで入れ替わる前提で計画します。

弱電の工事は、電気工事店・通信事業者・機器の業者など関わる人が多いのも特徴です。誰がどこまで引くかは【弱電設備の設計マニュアル①】全体フローと工事区分で解説しています。

ここまでのポイント
  • 強電は電力、弱電は情報を運ぶ
  • 弱電で効くのは距離とノイズ
  • 弱電は数年で規格が替わる

LAN ― 光回線から各部屋へ

家のインターネットは、外から来た光回線をONU(光の信号を電気の信号に変える機器)で受け、ルーターを通して、ハブから各部屋の情報コンセント(LANの差込口)へ配線します。ONUとハブを1か所にまとめる箱が情報分電盤です。

LANのつながり

データが光回線から、各部屋の情報コンセントへ流れていきます。

  1. 光回線はONUで受ける
  2. ルーターは金属の箱の外に置く
  3. ハブから各部屋へLANを配る
ひっかけ注意
「情報分電盤にルーターまで入れればすっきり」ではありません。
情報分電盤は金属の箱なので、中に入れるとWi-Fiの電波が遮られ、熱もこもります。箱にはONUとハブをまとめ、ルーターは箱の外に出します。
ケーブル 速さの目安 使いどころ
Cat5e 1Gbps いまから新しく引く理由は少ない
Cat6A 10Gbps 住宅の新築で実用的な標準
Cat7・Cat8 それ以上 住宅では過剰になりやすい
LANケーブルの規格(カテゴリ)。回線の契約が1Gbpsでも、家の中の配線は先に上げておく意味があります。

ルーターの置き場所とどの部屋に引くかは家のLAN・Wi-Fi配線の考え方、ビルの情報コンセントとMDF・IDFは【弱電設備の設計マニュアル③】LAN・電話で解説しています。

動く図解で見る:LAN・電話 ― 情報コンセントとMDF・IDF距離でIDFの位置が決まる様子を動く図解で(弱電設備のページへ)

ここまでのポイント
  • 光回線 → ONU → ルーター → ハブ → 情報コンセント
  • ルーターは金属の箱の外へ
  • 新築のLANケーブルはCat6A


テレビとインターホン ― 分けて届ける、細い線で呼ぶ

テレビは、屋根や壁のアンテナで受けた電波を同軸ケーブルで家の中へ引き込み、ブースターで強くしてから分配器で各部屋のテレビ端子へ分けます。電波は分けるたびに、ケーブルを通るたびに弱くなるので、端子で映る強さが残るように組み立てます。

テレビの電波の届き方

下のグラフで、電波の強さが増えたり減ったりする様子を追えます。

  1. アンテナ → ブースター → 分配器 → 端子
  2. 強くできるのはブースターだけ
  3. ケーブルと分配で少しずつ弱くなる
ひっかけ注意
「映りが悪ければ、ブースターを大きくすれば直る」とは限りません。
ブースターは電波と一緒に雑音も大きくします。もともとの電波が乱れているときは良くなりません。強すぎる電波でかえって映らなくなることもあります。

インターホンは、玄関の子機と居間の親機を細い線でつないだ弱電の設備です。子機のボタンを押すと親機のチャイムが鳴り、カメラ付きなら画面に来訪者の顔が映ります。子機の電気は親機から送り、親機の電源は100Vのコンセントか、壁の中の配線への直結でとります。

インターホンのしくみ

来訪者がボタンを押すと、居間の親機に顔が映ります。

  1. 玄関の子機と居間の親機を細い線でつなぐ
  2. 子機の電気は親機から送る
  3. 親機の電源は100V(コンセントか直結)

ビルやマンションのテレビ共聴のレベル計算は【弱電設備の設計マニュアル④】テレビ共聴、インターホン・宅配ボックス・防犯カメラの決め方は玄関まわりの弱電計画で解説しています。

動く図解で見る:テレビ共聴 ― 分配・分岐とレベル引き算で端子のレベルが決まる様子を動く図解で(弱電設備のページへ)

ここまでのポイント
  • テレビは分配器で各部屋のテレビ端子へ分ける
  • 電波は分けるたび、ケーブルを通るたびに弱くなる
  • インターホンは子機と親機を細い線でつなぐ

図面では、丸の中身と横の文字で読む

弱電の図記号は、多くが同じ大きさの丸から始まり、中身で設備を見分けます。中に黒丸があれば電話、縦長の黒ならLAN(情報用アウトレット)、二重丸ならテレビ端子です。横の小さな文字は、強電のような定格ではなく、コネクタの種類や数を表します。

記号の読み方

左の丸の中身と、右の横の文字が順に光ります。

  1. 黒丸は電話、縦長の黒はLAN、二重丸はテレビ
  2. LANの横の8は8ピンのコネクタ
  3. テレビ端子のRは終端抵抗付き
書き方 読み方
丸に黒丸 電話用アウトレット
丸に縦長の黒 情報用アウトレット(LAN)
二重丸 テレビ端子
丸に三角 スピーカ
8(LANの横) 8ピンのコネクタ(口数ではない)
R(テレビ端子の横) 終端抵抗付き(列のいちばん最後)
出典:JIS C 0303:2000 と官庁営繕の標準図の書き方。図面ごとの凡例が最優先です。

壁付・床付の書き分けや火災報知の記号までは【プロット図の見方④】弱電、コンセントと並べた複合の記号は【プロット図の見方㉑】複合コンセントで解説しています。

ここまでのポイント
  • 弱電の記号は丸の中身で見分ける
  • 横の文字はコネクタの種類や数
  • 数字はまず凡例で「何の数か」を確かめる


用途で見る ― 家の中の置き場所と空配管

弱電は、強電よりずっと早く規格が替わる設備です。そこで新築のときに、ケーブルと一緒に空配管(中に何も入れない配管)を通しておきます。配管さえあれば、10年後に古いケーブルを抜いて、新しいケーブルを通すだけで入れ替えられます。

空配管の効き目

壁の中のCD管から古いケーブルを抜き、新しいケーブルを通します。

  1. 空配管があれば、ケーブルだけ入れ替えられる
  2. なければ、壁や天井をはがすことになる
  3. 機器は住んでから選べる

家の中では、アンテナからテレビ端子への配線、情報分電盤、2階廊下の天井のアクセスポイント、書斎や子ども部屋のLAN、居間のテレビ裏、玄関のインターホンが弱電の主な置き場所です。

家の中の弱電

番号のピンが順に立ち、家の中の弱電の置き場所が光ります。

  1. 情報分電盤は家の中心近くに
  2. 2階廊下の天井にLANと電源を1か所
  3. 門柱までは空配管を通しておく
場所 弱電の設備 ポイント
階段下など家の中心 情報分電盤(ONU・ハブ) 電源のコンセントも用意する
2階廊下の天井 アクセスポイント LANと電源をセットで
書斎・子ども部屋 LANの情報コンセント 子ども部屋は将来の間仕切りの両側に
居間のテレビ裏 テレビ端子+LAN テレビ・ゲーム・レコーダー
玄関・門柱 インターホン・防犯カメラ 門柱までは空配管
住宅での置き場所の例です。

空配管の考え方は【弱電設備の設計マニュアル②】配管・配線ルートとスマートホーム配線の基礎、配管そのものの種類は電線管(配管)とはで解説しています。

動く図解で見る:配管・配線ルート ― 空配管という保険通り道を先に作る考え方を動く図解で(弱電設備のページへ)

ここまでのポイント
  • 新築では空配管を一緒に通す
  • 2階廊下の天井にLANと電源
  • 門柱までは空配管

読み違えやすいところ

よくある読み違い

  1. 弱電は電気が弱いから安全と思う:親機やアクセスポイントの電源は100Vの強電です。
  2. ルーターを情報分電盤の中に入れる:金属の箱でWi-Fiの電波が遮られます。
  3. LANの横の「8」を8口と読む:8ピンのコネクタという意味です。
  4. 電話と押しボタンを取り違える:電話は丸に黒丸、押しボタンは四角に黒丸です。
  5. 空配管を後回しにする:壁や天井が閉じると、あとから通すのは大がかりになります。

動く図解で学ぶ電気設備この記事の図のほかにも、弱電の設計を動く図解で見られます。気になるジャンルを選んでください。

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よくある質問

弱電とは何ですか?

LAN・電話・テレビ・インターホン・放送・防犯カメラのように、情報や信号を運ぶための電気の設備です。照明やコンセントのように電力を運ぶ設備を強電と呼ぶのに対して、弱電と呼びます。流れる電気が小さく、線も細いのが特徴です。

強電と弱電の違いは何ですか?

強電は電力を運び、流れる電流で電線の太さが決まります。弱電は情報を運び、効いてくるのは距離とノイズです。もうひとつの大きな違いは入れ替えの周期で、強電の配線は数十年そのまま使うのに対し、LANなどの弱電は数年で規格の世代が替わります。

情報分電盤にルーターを入れてもいいですか?

おすすめしません。情報分電盤は金属の箱なので、中に入れるとWi-Fiの電波が遮られ、熱もこもります。箱にはONUとハブをまとめ、ルーターは箱の外に出すのが現実的です。

テレビの映りが悪いときは、ブースターを付ければ直りますか?

電波の強さが足りないだけなら効きます。ただしブースターは雑音も一緒に増幅するので、もともとの電波が乱れている場合は良くなりません。アンテナの向きや、ケーブル・分配器の劣化もあわせて確かめます。

インターホンの交換は自分でできますか?

親機がコンセントに差すタイプなら、同じ配線を使う機種への交換は比較的かんたんです。電源を壁の中の配線に直接つなぐタイプは電気工事士の資格が必要な工事になるので、電気工事店に頼みます。

空配管とは何ですか?

中に何も入れずに通しておく配管です。LANやテレビの規格が変わったとき、古いケーブルを抜いて新しいケーブルを通すだけで入れ替えられます。壁や天井をはがさずに済むので、新築のときに通しておくと将来の工事費を抑えられます。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。