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分電盤からずっと遠くの照明だけ、なんとなく暗い。駐車場の端の外灯が、手前より弱い。原因のひとつが電圧降下です。電線は電気を運ぶ道ですが、道にも少しずつ抵抗があり、運んでいるうちに電圧が減ります。この記事では、電圧降下のしくみ、何で大きくなるか、どこまで下がってよいか、計算のしかた、設計での使いどころを、使っている場面の動く図解でほどきます。超基本の17本目です。

結論

電圧降下は電線の中で減る電圧です。長い・電流が大きい・細いほど大きくなります。目安は、こう長60m以下なら幹線2%+分岐回路2%(構内の変圧器からなら幹線3%)。長い回路では、電線の太さを電圧降下で決めることになります。

  • こう長は直線距離ではなく実際の長さ
  • 60mを超えたら幹線と分岐回路の合計で見る
  • 略算式は e=K×L×I÷(1000×A)
  • 単相3線式の2%は2V。4Vではない
この記事で押さえる5つのこと
項目を押すと、その章へ飛びます。図はすべて使っている場面の動く図解で、押すと大きく見られます。

この図の読み方

くり返し動きます。左から、もの・基準・用途の順です。

  1. もの:電線の中で減る電圧
  2. 基準:幹線2%と分岐回路2%が目安
  3. 用途:長い回路の電線の太さを決める

動く図解で学ぶ電気設備電気のきほんの動く図解11本を、まとめて見られます見る →

電圧降下とは ― 電線の中で電圧が減る

電線は銅でできていて、電気をよく通します。それでもほんの少しの抵抗があります。電流が流れると、この抵抗で電圧が少しずつ使われ、先へ行くほど電圧が低くなります。分電盤で100Vあっても、遠くの照明に届くころには98V、97Vと下がっていきます。この減った分が電圧降下です。

遠くほど下がる

分電盤から離れるほど、照明の電圧が下がり、明かりが弱くなります。

  1. 分電盤では100V
  2. 先へ行くほど電圧が下がる
  3. 遠くの照明ほど暗くなる
たとえるなら
電圧降下は「長いホースの先の水の勢い」
蛇口を同じだけひねっても、長いホースの先では水の勢いが弱くなります。ホースの中で少しずつ勢いが失われるからです。電線も同じで、長いほど、たくさん流すほど、先での勢い(電圧)が落ちます。ホースを太くすると勢いが戻るのも同じです。

電線の種類と太さは電線とケーブルとは、回路の分かれ方は分電盤とブレーカーとはで解説しています。

動く図解で見る:電圧降下 ― 長さ・太さで電圧が下がるしくみ電線の中で減る電圧を動く図解で(電気のきほんのページへ)

ここまでのポイント
  • 電線にも少し抵抗がある
  • 電流が流れると電圧が減る
  • 減った分が電圧降下

何で決まる ― 長さ・電流・太さ

電圧降下の大きさは、3つで決まります。電線が長いほど、流れる電流が大きいほど大きくなり、電線が太いほど小さくなります。長さが2倍なら降下も2倍、電流が2倍なら2倍、断面積が2倍なら半分です。

3つで決まる

長さ・電流・太さを変えると、電圧降下のバーが伸び縮みします。

  1. 長さ2倍で降下も2倍
  2. 電流2倍で降下も2倍
  3. 断面積2倍で降下は半分
変えるもの 電圧降下 設計での意味
長さ(こう長) 長いほど大きい 盤から遠い負荷ほど注意
電流 大きいほど大きい 容量の大きい負荷ほど注意
太さ(断面積) 太いほど小さい 足りなければ太くする
電圧降下は、長さと電流に比例し、断面積に反比例します。
ここまでのポイント
  • 長いほど大きい
  • 電流が大きいほど大きい
  • 太いほど小さい


許容値 ― どこまで下がってよいか

電圧降下はゼロにはできないので、どこまでなら許すかが決まっています。内線規程1310-1では、こう長60m以下なら、低圧で受電する建物は幹線2%・分岐回路2%、構内の変圧器から送る建物は幹線3%・分岐回路2%が目安です。60mを超える長い配線では、幹線と分岐回路の合計で見ます。

許容値の目安

幹線と分岐回路の許容値が順に積み上がり、60m超の表が光ります。

  1. 60m以下は幹線と分岐回路で別々
  2. 低圧受電は2%+2%
  3. 60m超は合計で見る
たとえるなら
許容値は「旅行のおこづかい」
旅行のおこづかいが4,000円なら、行きの電車(幹線)で2,000円、現地(分岐回路)で2,000円と配分します。行きで使いすぎると、現地で使える分が減ります。電圧降下も、受電点から末端までの持ち分を、幹線と分岐回路で分け合っています。
ひっかけ注意
「60mを超えたら幹線2%が3%に増える」のではありません。
60mを超えたら、幹線と分岐回路を分けずに合計で見ます。たとえば構内の変圧器から送る建物で120m以下なら、合計5%以下です。表の数値は最新の内線規程で確かめます。

許容値とこう長の早見表は内線規程の解釈と解説【003】電圧降下(1310節)の許容値とこう長早見表で解説しています。

ここまでのポイント
  • 60m以下は幹線と分岐回路で別々
  • 低圧受電は2%+2%、変圧器からは3%+2%
  • 60m超は合計で見る

計算してみる ― 略算式で確かめる

電圧降下は、略算式 e=K×L×I÷(1000×A) で求められます。Kは配線方式の係数、Lはこう長〔m〕、Iは電流〔A〕、Aは電線の断面積〔mm²〕です。100V・こう長20m・15Aの単相2線式の回路で計算すると、2.0mmのVVFでは3.4V(3.4%)で2%を超え、5.5mm²に太くすると1.9V(1.9%)で収まります。

係数Kは、何本の電線で電圧が下がるかで変わります。単相2線式は行きと帰りの2本で下がるのでK=35.6、三相3線式はK=30.8、単相3線式は電圧線と中性線の間(100V)で見てK=17.8です。35.6は、銅の抵抗率から出てくる値です。

係数K

3つの配線方式のカードが順に光り、係数Kが並びます。

  1. 単相2線式は35.6
  2. 三相3線式は30.8
  3. 単相3線式は17.8
配線方式 係数K 何Vに対する%か
単相2線式 35.6 線間の電圧(100Vなど)
三相3線式 30.8 線間の電圧(200Vなど)
単相3線式 17.8 電圧線と中性線の間(100V)
係数Kは、負荷がつり合っているとした略算の値です。
ひっかけ注意
単相3線式の「2%」を200Vで計算して4Vとしてはいけません。
単相3線式のKは、電圧線と中性線の間(100V)の電圧降下を出す係数です。だから2%は100Vの2%で2Vです。200Vの2%(4V)で判定すると、甘い判定になります。

単相3線式のしくみは単相回路とは、三相3線式は三相回路とは、どの電圧で見るかは線間電圧とはで解説しています。すぐに計算したいときは電圧降下計算ツールが使えます。

動く図解で見る:電圧降下の計算略算式の使い方を動く図解で(電気のきほんのページへ)

ここまでのポイント
  • e=K×L×I÷(1000×A)
  • Kは配線方式で変わる
  • 単相3線式の2%は2V


用途と対策 ― 長い回路は電圧降下で太さが決まる

電線の太さは、まず許容電流(熱くならないか)で選びます。短い回路なら、それで電圧降下も小さく収まります。でも回路が長くなると、許容電流ではOKでも、電圧降下で太くし直すことになります。外構の門灯や駐車場の照明、離れた棟への幹線は、電圧降下で太さが決まりやすい回路です。

太さを決める主役

短い回路と長い回路で、太さを決める主役が入れ替わります。

  1. 短い回路は許容電流で決まる
  2. 長い回路は電圧降下で決まる
  3. 外構や離れた棟は要注意

電圧降下が大きすぎるときの打ち手は4つです。電線を太くする、分電盤を負荷の近くに置く、回路を分けて電流を減らす、電圧を上げる。どれを選ぶかは、コストと施工性、建物の計画で決めます。

4つの打ち手

4つの打ち手のカードが順に光ります。

  1. 電線を太くする
  2. 盤を近くに置く
  3. 回路を分ける・電圧を上げる
ひっかけ注意
こう長を図面の直線距離で測ってはいけません。
電線は天井に上がり、梁をよけて曲がり、壁の中を下ります。実際の長さは直線距離より長くなるので、ルートに沿って拾います。

幹線の太さを電圧降下で選ぶ流れは電圧降下の許容範囲は何%?条件別の判定表と幹線サイズ自動計算、動力の長い回路は動力とはで解説しています。

動く図解で見る:電圧降下の検証幹線の太さを電圧降下で確かめる流れ(幹線設備のページへ)

ここまでのポイント
  • 短い回路は許容電流で決まる
  • 長い回路は電圧降下で決まる
  • 打ち手は太く・近く・分ける・上げる

読み違えやすいところ

よくある読み違い

  1. こう長を直線距離で測る:実際のルートの長さで見ます。
  2. 60mを超えたら区間ごとの%が増えると思う:幹線と分岐回路の合計で見ます。
  3. 単相3線式の2%を4Vとする:100Vの2%で2Vです。
  4. 許容電流さえ満たせばよいと思う:長い回路は電圧降下で太くし直します。
  5. どの方式も同じ係数で計算する:Kは配線方式で変わります。

動く図解で学ぶ電気設備この記事の図のほかにも、電気のきほんを動く図解で見られます。気になるジャンルを選んでください。

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よくある質問

電圧降下とは何ですか?

電線に電流が流れるとき、電線の抵抗で電圧が少しずつ減ることです。分電盤で100Vあっても、遠くのコンセントや照明では100Vより低くなります。この減った分が電圧降下です。

電圧降下は何で決まりますか?

電線の長さ・流れる電流・電線の太さ(断面積)で決まります。長いほど、電流が大きいほど大きくなり、電線を太くすると小さくなります。

電圧降下は何%までならよいですか?

内線規程1310-1では、こう長60m以下なら、低圧で受電する場合は幹線2%・分岐回路2%、構内の変圧器から送る場合は幹線3%・分岐回路2%が目安です。60mを超える場合は、幹線と分岐回路の合計で見ます。数値は最新の内線規程で確かめます。

こう長とは何ですか?

電線の実際の長さです。図面上の直線距離ではなく、天井に上がり、梁をよけて曲がり、壁の中を下りる道のりで見ます。許容値の表では、受電点や変圧器から一番遠い負荷までの長さを使います。

電圧降下の計算式は?

略算式 e=K×L×I÷(1000×A) がよく使われます。Kは配線方式の係数(単相2線式35.6、三相3線式30.8、単相3線式17.8)、Lはこう長〔m〕、Iは電流〔A〕、Aは電線の断面積〔mm²〕です。

電圧降下が大きいとどうなりますか?

照明が暗くなる、モーターが力を出せず熱くなる、機器が止まるなどが起こります。対策は、電線を太くする、分電盤を負荷の近くに置く、回路を分けて電流を減らす、電圧を上げる、の4つです。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。