📚 この記事は連載「高圧受変電設備の設計マニュアル」(全14回)の第12回です。前回:第11回 力率改善設備 ― SC・SRと6%の根拠/資料編:機器別 目的早見表

こんにちは、HARITAの設計室です。第12回は接地です。

接地は特定のブロックにあるものではなく、設備全体にかかる話です。図面上は「⏚」の小さな記号とA〜Dの文字だけ。ところがここを外すと、人が死にます。受変電で最も真剣に扱うべき項目です。

ペンタ
接地って、A種・B種・C種・D種で抵抗値が違うのは覚えたんですけど…正直、丸暗記です。
はりた
数値の暗記は最後でいい。「何を守るための接地か」を先につかむと、数値の理由まで見えてくる。とくにB種だけが他の3つと目的が違う。そこが今日の山だよ。

接地は「電気が大地へ帰る道」をつくること

接地の3つの目的
① 感電を防ぐ…機器の外箱に漏電したとき、電流を大地へ流して人が触れても危険な電圧にならないようにする
② 保護装置を確実に動作させる…地絡電流の通り道がなければ、継電器は地絡を検出できない(第8回)
③ 電位の基準をつくる…回路の電位を大地基準に固定し、異常電圧の侵入を抑える

とくに②は見落とされがちです。接地は「保護装置とセットで初めて機能する」と覚えてください。

4種類の接地 ― まず「何を守るか」で覚える

種別 何に施すか なにを守るための接地か 接地抵抗値
A種 高圧機器の金属製外箱、避雷器、高圧計器用変成器の二次側 など 高圧が漏れたときに人を守る。電圧が高いぶん、確実に大地へ流す必要がある 10Ω以下
B種 変圧器の低圧側の中性点(または1端子) 高圧が低圧側へ侵入するのを防ぐ。他の3つとは目的が違う 計算で決まる(後述)
C種 300Vを超える低圧機器の金属製外箱など 低圧の漏電から人を守る(電圧が高いぶん厳しい値) 10Ω以下
0.5秒以内に自動遮断する装置があれば500Ω以下
D種 300V以下の低圧機器の金属製外箱など 同上。いちばん人が触れる場所にある接地 100Ω以下
0.5秒以内に自動遮断する装置があれば500Ω以下
💡 C種とD種の「500Ωへの緩和」の意味
なぜ漏電遮断器があると500Ωまで許されるのか。答えは「危険な電圧がかかっている時間が短いから」です。
接地抵抗が高くても、0.5秒以内に電源が切れれば人体への影響は小さい。つまり抵抗値と遮断時間はトレードオフなのです。
数値を丸暗記するより、この関係で理解しておくほうが忘れません。
📎 種別ごとの詳しい規定は個別記事にまとめています。
→ A種接地工事B種接地工事C種接地工事D種接地工事

B種接地だけが特別 ― 混触を止める最後の砦

A種・C種・D種は「漏電したときに人を守る」接地です。ところがB種だけは目的が違います。守る相手は低圧側の設備と人すべてです。

⚡ 混触が起きるとどうなるか
変圧器の内部で、一次巻線と二次巻線が接触(混触)
   ↓
6,600V が低圧側へ流れ込む
   ↓
【B種接地がなければ】
 低圧回路全体の電位が跳ね上がる
   ↓
 建物中のコンセント・照明・OA機器が
 高圧にさらされ、触れた人は感電死

【B種接地があれば】
 電流が大地へ流れ、
 低圧側の電位上昇が一定値以下に抑えられる

第9回で「変圧器は高圧と低圧を絶縁で切り離している」と書きました。その絶縁が破れたときの保険がB種接地です。だから施す場所も、他とは違って機器の外箱ではなく電路(低圧側の中性点または1端子)になります。
B種の抵抗値が「計算で決まる」理由
A種のように一律10Ω、とはいきません。その系統に流れる1線地絡電流(Ig)が物件ごとに違うからです。
電技解釈では、150 ÷ Ig[Ω]以下が基本。さらに、高圧側の電路を自動遮断する装置があれば緩和されます。
・1秒を超え2秒以内に遮断する装置がある場合 … 300 ÷ Ig
・1秒以内に遮断する装置がある場合 … 600 ÷ Ig

ここでも「速く切れるなら、抵抗値は緩めてよい」という同じ考え方が使われています。C種・D種の500Ω緩和とまったく同じ発想です。
1線地絡電流Igは電力会社に照会して求めます。設計者が勝手に決める数値ではありません。


A種とB種の接地極は分けるのか

⚠ 原則は「分離」
A種(高圧機器の外箱)とB種(低圧側の電路)の接地極を安易に共用すると、高圧側で地絡が起きたときに、その電位上昇が低圧側にそのまま現れます
これはB種接地の目的そのものを損ないます。原則として接地極は分離し、規定の離隔をとるのが基本です。
共用が認められる条件や、実際の離隔の取り方は個別記事にまとめています。
→ 接地極の共用方法について詳しく解説

接地線のサイズ ― 「つながっていればいい」ではない

サイズが太さで決まる理由
接地線には、事故時に大きな電流が短時間だけ流れます。細すぎれば溶断し、その瞬間に接地は失われます。
A種・B種…高圧側の事故電流に耐える太さが要る
C種・D種…その回路の過電流遮断器の定格に応じた太さで決める
避雷器の接地線…第5回のとおり太く・短く・鋭く曲げない。雷サージには線のインダクタンスが効く

実務では内線規程の早見表から選びます。
→ 接地線の太さ早見表と接地工事の種類(A種〜D種)選定まとめ
→ 【新人講座 第15回】接地(アース)のきほんと接地線サイズ

単線結線図では、こう描かれる

接地の記載要素
① 接地記号…横線が3本、下にいくほど短い(第3回)
② 種別…A種・B種・C種・D種の別。記号のそばに書く
③ 接地する箇所…避雷器、キュービクル外箱、変圧器二次側の中性点、計器用変成器の二次側 など
④ 接地線サイズ…図面または別紙の仕様書に記載
⑤ 接地極…共用か分離か、離隔の考え方

単線結線図では省略されがちですが、どこにどの種別の接地があるかは必ず読み取れるように描くべき項目です。竣工時の接地抵抗測定は、この図面が基準になります。

ペンタ
「速く切れるなら抵抗値は緩めていい」って、C種D種の500Ωも、B種の300/600も、全部同じ考え方だったんですね。
はりた
そこに気づけたら合格。危険は「電圧の高さ×かかる時間」で決まる。だから時間を短くできれば電圧側は緩められる。基準の数字はだいたいこの理屈でできてるんだ。


新人がやりがちなミス 3選

① B種を「機器の外箱の接地」だと思う
B種は電路(変圧器二次側の中性点または1端子)に施します。外箱ではありません。目的が「混触時の電位上昇を抑える」ことだと分かれば、施す場所も自然に決まります。
② 「500Ω以下でいい」を条件なしで適用する
緩和には0.5秒以内に自動遮断する装置があるという前提があります。漏電遮断器がない回路に適用してはいけません。緩和の条件とセットで覚えることが大事です。
③ 接地抵抗を「測ればいい」で終わらせる
接地抵抗は季節や土壌の乾燥で変動します。竣工時にぎりぎり合格した接地は、乾期に基準を外れることがあります。余裕を持った設計と、定期点検での継続確認が要ります。

まとめ

第12回のまとめ
・接地の目的は①感電を防ぐ ②保護装置を確実に動作させる ③電位の基準をつくる
・A種・C種・D種は機器の外箱に施し、漏電から人を守る
B種だけは電路(変圧器二次側)に施し、混触時の高圧侵入を防ぐ
・A種10Ω以下、C種10Ω以下、D種100Ω以下。C・Dは0.5秒以内に遮断する装置があれば500Ω以下
・B種は150÷Igが基本。1秒超2秒以内の遮断で300÷Ig、1秒以内で600÷Ig
・共通する考え方は「速く切れるなら抵抗値は緩めてよい」
・A種とB種の接地極は原則分離。共用するとB種の目的を損なう
・接地線は事故電流に耐える太さが必要。避雷器は太く短く
✅ 今日のチェックリスト(できたらチェック)

よくある質問

Q. 1線地絡電流 Ig はどうやって求めるのですか?
配電系統の条件で決まるため、電力会社に照会します。設計側で仮定して決める数値ではありません。B種の目標抵抗値は、この照会結果が出て初めて確定します。受電協議の早い段階で確認しておくと、接地工事の計画が立てやすくなります。
Q. 接地抵抗が規定値まで下がらないときは?
接地極を増やす、深く打つ、接地抵抗低減剤を使う、といった対策があります。それでも下がらない場合は設計の前提から見直す必要があります。土質は現地でしか分からないため、施工前の試験施工が有効です。
→ ローリーアースの設置基準と接地線サイズの選定方法
Q. 接地を省略できる場合はありますか?
条件付きであります。二重絶縁構造の機器、乾燥した場所に施設する場合、絶縁変圧器を使う場合など、規定に該当すれば省略できます。ただし「面倒だから省く」は絶対に不可。条件は個別記事にまとめています。
→ 接地線の免除方法について詳しく解説
Q. 病院の接地は違うのですか?
医療機器を扱う場所には医用接地という別の考え方があり、JIS T 1022(病院電気設備の安全基準)に基づいて設計します。患者に直接電極が触れる環境では、通常の接地基準では足りません。
→ 医用接地の設置基準と設計指針


次回予告

第13回:非常用発電設備と系統連系 ― 予備電源をどう描くか
6つの役割の最後、「備える」です。停電を検出して自動始動する仕組み(UVRの出番)、商用と発電機を同時に投入させないインタロック、そして太陽光の系統連系と単独運転防止を扱います。

参考:電気設備の技術基準の解釈 第17条(接地工事の種類及び施設方法)/内線規程 JEAC 8001/高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/JIS T 1022 病院電気設備の安全基準

次に読むならこれ【コンセント設備の設計マニュアル⑥・最終回】図面化と拾い・積算 ― 「あとで拾える図面」で締めくくる設計マニュアル