連載第12回。接地を「何を守るための接地か」で整理します。A・C・D種は機器の外箱、B種だけは電路に施して混触時の高圧侵入を防ぐ。500Ω緩和も300÷Ig・600÷Igも「速く切れるなら緩めてよい」という同じ理屈です。
図解まとめ:接地の3つの目的、A〜D種の施設場所と抵抗値(電技解釈 第17条)、B種だけが計算で決まる理由、図面で確認すべき4点を1枚に整理しました。こんにちは、HARITAの設計室です。第12回は接地です。
接地は特定のブロックにあるものではなく、設備全体にかかる話です。図面上は「⏚」の小さな記号とA〜Dの文字だけ。ところがここを外すと、人が死にます。受変電で最も真剣に扱うべき項目です。
この3つ、すぐ答えられますか
- A種・C種・D種と、B種。守っている相手はどう違いますか。
- B種の抵抗値だけが計算で決まるのは、なぜですか。
- C・Dの500Ω緩和には、どんな前提が付いていますか。

接地って、A種・B種・C種・D種で抵抗値が違うのは覚えたんですけど…正直、丸暗記です。

数値の暗記は最後でいい。「何を守るための接地か」を先につかむと、数値の理由まで見えてくる。とくにB種だけが他の3つと目的が違う。そこが今日の山だよ。
この記事でわかること
数値の暗記は最後で構いません。「何を守るための接地か」を先につかむと、数値の理由まで見えてきます。
📐 図1 接地があるとき・ないときで、電流はどこを通るか
図1:接地がないと、外箱に触れた人が「接地の代わり」になります。接地線があれば漏電電流はそちらを通り、人体にはほとんど流れません。接地抵抗を小さくする意味はここにあります。
接地は「電気が大地へ帰る道」をつくること
接地の3つの目的
① 感電を防ぐ…機器の外箱に漏電したとき、電流を大地へ流して人が触れても危険な電圧にならないようにする
② 保護装置を確実に動作させる…地絡電流の通り道がなければ、継電器は地絡を検出できない(第8回)
③ 電位の基準をつくる…回路の電位を大地基準に固定し、異常電圧の侵入を抑える
とくに②は見落とされがちです。接地は「保護装置とセットで初めて機能する」と覚えてください。
ここまでのポイント
- 接地の目的は①感電を防ぐ ②保護装置を確実に動作させる ③電位の基準をつくる
- ②は見落とされやすい。地絡電流の通り道がなければ、継電器は地絡を検出できない
- 接地は「保護装置とセットで初めて機能する」と覚える
4種類の接地 ― まず「何を守るか」で覚える
| 種別 | 何に施すか | なにを守るための接地か | 接地抵抗値 |
| A種 | 高圧機器の金属製外箱、避雷器、高圧計器用変成器の二次側 など | 高圧が漏れたときに人を守る。電圧が高いぶん、確実に大地へ流す必要がある | 10Ω以下 |
| B種 | 変圧器の低圧側の中性点(または1端子) | 高圧が低圧側へ侵入するのを防ぐ。他の3つとは目的が違う | 計算で決まる(後述) |
| C種 | 300Vを超える低圧機器の金属製外箱など | 低圧の漏電から人を守る(電圧が高いぶん厳しい値) | 10Ω以下 0.5秒以内に自動遮断する装置があれば500Ω以下 |
| D種 | 300V以下の低圧機器の金属製外箱など | 同上。いちばん人が触れる場所にある接地 | 100Ω以下 0.5秒以内に自動遮断する装置があれば500Ω以下 |
💡 C種とD種の「500Ωへの緩和」の意味
なぜ
漏電遮断器があると500Ωまで許されるのか。答えは
「危険な電圧がかかっている時間が短いから」です。
接地抵抗が高くても、
0.5秒以内に電源が切れれば人体への影響は小さい。つまり
抵抗値と遮断時間はトレードオフなのです。
数値を丸暗記するより、この関係で理解しておくほうが忘れません。
📐 図2 B種接地 ― 混触したときの低圧側を守る
図2:一次と二次が混触すると、低圧側の対地電圧は Ig × RB まで上がります。だから B種だけは系統の1線地絡電流 Ig から計算し、高圧側の遮断時間によって 150/300/600 を使い分けます。
ここまでのポイント
- A種・C種・D種は機器の外箱に施し、漏電したときに人を守る
- B種だけは電路(変圧器の低圧側)に施し、目的そのものが違う
- 抵抗値の暗記より先に、「何に施すか/何を守るか」で整理する
B種接地だけが特別 ― 混触を止める最後の砦
A種・C種・D種は「漏電したときに人を守る」接地です。ところがB種だけは目的が違います。守る相手は低圧側の設備と人すべてです。
⚡ 混触が起きるとどうなるか
変圧器の内部で、一次巻線と二次巻線が接触(混触)
↓
6,600V が低圧側へ流れ込む
↓
【B種接地がなければ】
低圧回路全体の電位が跳ね上がる
↓
建物中の
コンセント・照明・OA機器が
高圧にさらされ、触れた人は感電死
【B種接地があれば】
電流が大地へ流れ、
低圧側の電位上昇が一定値以下に抑えられる
第9回で「変圧器は高圧と低圧を絶縁で切り離している」と書きました。その絶縁が破れたときの保険がB種接地です。だから施す場所も、他とは違って機器の外箱ではなく電路(低圧側の中性点または1端子)になります。
B種の抵抗値が「計算で決まる」理由
A種のように一律10Ω、とはいきません。その系統に流れる1線地絡電流(Ig)が物件ごとに違うからです。
電技解釈では、150 ÷ Ig[Ω]以下が基本。さらに、高圧側の電路を自動遮断する装置があれば緩和されます。
・1秒を超え2秒以内に遮断する装置がある場合 … 300 ÷ Ig
・1秒以内に遮断する装置がある場合 … 600 ÷ Ig
ここでも「速く切れるなら、抵抗値は緩めてよい」という同じ考え方が使われています。C種・D種の500Ω緩和とまったく同じ発想です。
1線地絡電流Igは電力会社に照会して求めます。設計者が勝手に決める数値ではありません。
| 高圧側の遮断 | B種接地抵抗の上限 | 考え方 |
| 基本 | 150 ÷ Ig [Ω]以下 | 混触時の低圧側の電位上昇を一定値以下に抑える |
| 1秒を超え2秒以内に遮断する装置がある | 300 ÷ Ig [Ω]以下 | 速く切れるぶん、抵抗値は緩めてよい |
| 1秒以内に遮断する装置がある | 600 ÷ Ig [Ω]以下 | さらに速く切れるので、さらに緩められる |
ここまでのポイント
- B種が守るのは低圧側の設備と人すべて。施す場所も外箱ではなく電路
- 1線地絡電流 Ig は物件ごとに違うため、抵抗値は一律ではなく計算で決まる
- Ig は電力会社に照会して求める。設計者が勝手に決める数値ではない
A種とB種の接地極は分けるのか
⚠ 原則は「分離」
A種(高圧機器の外箱)とB種(低圧側の電路)の
接地極を安易に共用すると、
高圧側で地絡が起きたときに、その電位上昇が低圧側にそのまま現れます。
これはB種接地の目的そのものを損ないます。原則として
接地極は分離し、規定の離隔をとるのが基本です。
共用が認められる条件や、実際の離隔の取り方は個別記事にまとめています。
→ 接地極の共用方法について詳しく解説
ここまでのポイント
- 原則はA種とB種の接地極を分離し、規定の離隔をとる
- 安易に共用すると、高圧側の地絡による電位上昇がそのまま低圧側に現れる
- それはB種接地の目的そのものを損なうことになる
接地線のサイズ ― 「つながっていればいい」ではない
📐 図3 単線結線図のどこに、どの接地が付くか
図3:避雷器と高圧機器の外箱は A種、変圧器の低圧側中性点は B種、計器用変成器の二次と 300V以下の低圧機器は D種、300V超は C種。色で覚えると図面上で迷いません。
ここまでのポイント
- 接地線には事故時に大きな電流が短時間だけ流れる。細すぎれば溶断し、接地は失われる
- A種・B種は高圧側の事故電流に、C種・D種はその回路の過電流遮断器の定格に応じて決める
- 避雷器の接地線は太く・短く・鋭く曲げない。雷サージには線のインダクタンスが効く
単線結線図では、こう描かれる
接地の記載要素
① 接地記号…横線が3本、下にいくほど短い(第3回)
② 種別…A種・B種・C種・D種の別。記号のそばに書く
③ 接地する箇所…避雷器、キュービクル外箱、変圧器二次側の中性点、計器用変成器の二次側 など
④ 接地線サイズ…図面または別紙の仕様書に記載
⑤ 接地極…共用か分離か、離隔の考え方
単線結線図では省略されがちですが、どこにどの種別の接地があるかは必ず読み取れるように描くべき項目です。竣工時の接地抵抗測定は、この図面が基準になります。

「速く切れるなら抵抗値は緩めていい」って、C種D種の500Ωも、B種の300/600も、全部同じ考え方だったんですね。

そこに気づけたら合格。危険は「電圧の高さ×かかる時間」で決まる。だから時間を短くできれば電圧側は緩められる。基準の数字はだいたいこの理屈でできてるんだ。
図4:作図イメージ ― 避雷器と高圧機器の外箱はA種、変圧器二次側の中性点はB種、低圧機器は300V以下がD種・300V超がC種。記号のそばに種別を書き、接地極を分離するかどうかまで図面で分かるようにします。
ここまでのポイント
- 記載要素は①接地記号 ②種別 ③接地する箇所 ④接地線サイズ ⑤接地極(共用か分離か)
- 接地記号は横線が3本、下にいくほど短い(第3回)
- 竣工時の接地抵抗測定は、この図面が基準になる
新人がやりがちなミス 3選
① B種を「機器の外箱の接地」だと思う
B種は電路(変圧器二次側の中性点または1端子)に施します。外箱ではありません。目的が「混触時の電位上昇を抑える」ことだと分かれば、施す場所も自然に決まります。
② 「500Ω以下でいい」を条件なしで適用する
緩和には0.5秒以内に自動遮断する装置があるという前提があります。漏電遮断器がない回路に適用してはいけません。緩和の条件とセットで覚えることが大事です。
③ 接地抵抗を「測ればいい」で終わらせる
接地抵抗は季節や土壌の乾燥で変動します。竣工時にぎりぎり合格した接地は、乾期に基準を外れることがあります。余裕を持った設計と、定期点検での継続確認が要ります。
ここまでのポイント
- B種は外箱ではなく電路(変圧器二次側の中性点または1端子)に施す
- 500Ω緩和には「0.5秒以内に自動遮断する装置がある」という前提が付く
- 接地抵抗は季節や土壌の乾燥で変動する。余裕を持った設計と、定期点検での継続確認が要る
まとめ
接地は「何を守るための接地か」で見ると、数値の理由まで見えてきます。A種・C種・D種は外箱に施して漏電から人を守る接地、B種だけは電路に施して混触時の高圧侵入を止める接地。そして緩和の条件はどれも「速く切れるなら、抵抗値は緩めてよい」という同じ理屈でできています。
4種類の接地を、1枚で見る
| 種別 | 何に施すか | 守る相手 | 接地抵抗値 |
| A種 | 高圧機器の金属製外箱、避雷器、高圧計器用変成器の二次側 など | 高圧が漏れたときの人 | 10Ω以下 |
| B種 | 変圧器 低圧側の中性点または1端子(電路) | 低圧側の設備と人すべて | 150÷Ig が基本(300÷Ig・600÷Ig に緩和) |
| C種 | 300V超の低圧機器の外箱 | 漏電したときの人 | 10Ω以下(0.5秒以内に遮断する装置があれば500Ω以下) |
| D種 | 300V以下の低圧機器の外箱 | 漏電したときの人 | 100Ω以下(0.5秒以内に遮断する装置があれば500Ω以下) |
目的と、施す場所
何を守るか
- 接地の目的は①感電を防ぐ ②保護装置を確実に動作させる ③電位の基準をつくる
- A種・C種・D種は機器の外箱に施し、漏電から人を守る
- B種だけは電路(変圧器二次側)に施し、混触時の高圧侵入を防ぐ
数値と、その理由
抵抗値と緩和
- A種10Ω以下、C種10Ω以下、D種100Ω以下。C・Dは0.5秒以内に遮断する装置があれば500Ω以下
- B種は150÷Igが基本。1秒超2秒以内の遮断で300÷Ig、1秒以内で600÷Ig
- 共通する考え方は「速く切れるなら抵抗値は緩めてよい」
施工と図面で外さないこと
接地極と接地線
- A種とB種の接地極は原則分離。共用するとB種の目的を損なう
- 接地線は事故電流に耐える太さが必要。避雷器は太く短く
最後に ― 図面上は小さな記号でも
接地は特定のブロックにあるものではなく、設備全体にかかる話です。図面上は「⏚」の小さな記号とA〜Dの文字だけ。ところがここを外すと、人が死にます。受変電でもっとも真剣に扱うべき項目が、いちばん小さく描かれている ― そのことだけは忘れないでください。
📝 理解度チェック(全3問クイズ)
Q1. B種接地工事の目的は?
A.高圧と低圧が混触したとき、低圧側の電位上昇を抑えること
B.機器の金属製外箱に触れたときの感電を防ぐこと
C.避雷器の放電電流を大地へ流すこと
答えと解説を見る
正解:A
B種は変圧器の低圧側中性点(または1端子)に施す接地で、混触時に低圧側が高圧に引き上げられるのを防ぐ「最後の砦」です。
Q2. B種接地抵抗値を求めるとき、1線地絡電流Igで割る値の組み合わせとして正しいのは?
A.150/300/600
B.10/100/500
C.2/5/10
答えと解説を見る
正解:A
原則150÷Ig。高圧側を1秒を超え2秒以内に遮断する装置があれば300÷Ig、1秒以内なら600÷Igまで緩和されます。
Q3. 高圧機器の金属製外箱に施す接地工事は?
A.A種
B.C種
C.D種
答えと解説を見る
正解:A
高圧・特別高圧機器の外箱や鉄台はA種です。C種は300Vを超える低圧、D種は300V以下の低圧機器に施します。
※ まず自分で答えを考えてから「答えと解説を見る」を開いてみてください。
よくある質問
Q. 1線地絡電流 Ig はどうやって求めるのですか?
配電系統の条件で決まるため、電力会社に照会します。設計側で仮定して決める数値ではありません。B種の目標抵抗値は、この照会結果が出て初めて確定します。受電協議の早い段階で確認しておくと、接地工事の計画が立てやすくなります。
Q. 病院の接地は違うのですか?
医療機器を扱う場所には
医用接地という別の考え方があり、JIS T 1022(病院電気設備の安全基準)に基づいて設計します。患者に直接電極が触れる環境では、通常の接地基準では足りません。
→ 医用接地の設置基準と設計指針
次回予告
参考:電気設備の技術基準の解釈 第17条(接地工事の種類及び施設方法)/内線規程 JEAC 8001/高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/JIS T 1022 病院電気設備の安全基準
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