出典(内線規程(JEAC8001-2022))より
深夜電力機器の施設基準と安全対策を徹底解説【電気工事のポイントも紹介】
深夜電力機器とは、電力会社が夜間の電力需要を平準化する目的で提供している「深夜電力プラン」を利用し、夜間の割安な電力を活用するための設備です。主に蓄熱式の温水器や暖房機器に使われています。
この記事では、深夜電力機器に関する施設基準と電気工事における安全対策について詳しく解説します。
対地電圧の規定
深夜電力機器に電力を供給する電路については、内線規程「1300-1(屋内電路の対地電圧の制限)」に基づいて対地電圧を制限する必要があります。
配線に関する施設基準と注意点
専用回路での引き込み
引込線の取付点から引込口装置までの配線は、他の回路と混用せず「専用回路」で構成することが必須です。
これは安全性と回路の安定性を確保するための基本原則です。
📖 内線規程「1370-5(低圧引込線の施設)」に準拠
一般負荷と深夜電力負荷の共用
両者を同一の配線で共用する場合、許容電流は次の式で算出します:
I = Ia + 0.7 × Ib
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I:共用部分の負荷電流
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Ia:深夜電力負荷
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Ib:一般負荷
「0.7」は電灯負荷の直率であり、電力負荷では「0.2」が標準です。ただし、使用実態によっては「1.0」とする場合もあります。
電線・配線の施設基準
電線の太さ
「3605-5(分岐回路の電線太さ)」に準拠し、負荷に応じた適切な電線を選定します。
専用分岐回路
原則、各深夜電力機器ごとに専用分岐回路を設けます。ただし、20A以下で保護される回路では共用が可能です。
配線方法
配線方法は以下のいずれかに限られます:
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金属管配線
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合成樹脂管配線
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金属製可とう電線管配線
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ケーブル配線
これは「3編1章(低圧配線方法)」に準拠した保護措置です。
配線途中の接続
原則として、途中に開閉器・コンセント等を設けることは禁止されています。やむを得ず分岐・接続が必要な場合は、封印可能な接続箱内で行う必要があります。
機器との接続
深夜電力機器とは、配線を直接接続する方式を取ります。
引込口装置の施設要件
基本構造と設置基準
「1370-7(引込口装置の施設)」に基づき、安全性を確保するために設けます。
配線用遮断器の設置
原則として、引込口装置には配線用遮断器が必要ですが、分岐側に設置されていれば省略可能です。
遮断器の仕様
「1360-12(過電流素子および開閉部の数)」を遵守し、安全性を確保します。
電力会社との協議
引込口装置周辺の配線については、必ず電力会社と協議が必要です。
設置場所と材質
遮断器は、放熱性の高い金属製分電盤などに設置することが推奨されます。
容量の選定
「3545-1表」に基づく容量の遮断器を使用するのが望ましいです。
タイムスイッチ・電磁接触器の設置基準
設置場所
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原則:一般負荷用電力量計の近く
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例外:電力会社と協議し、適切な場所を選定
屋内設置する場合は、電力会社との事前協議が必要です。
配線と結線
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タイムスイッチと電磁接触器は専用回路に接続
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結線例は資料「3-5-5」を参照
安全対策・保安工事
D種接地工事
金属製外箱は、感電防止のためD種接地工事を行う必要があります。ただし以下の場合は除外されます:
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乾燥した床上で使用される場合
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操作者が絶縁状態にあり、他の金属体と同時に接触しない構造である場合
漏電遮断器の設置
感電防止の観点から、高感度・高速形の漏電遮断器を設置する必要があります。
特に以下の条件では必須です:
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浴室での使用
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水気のある場所での設置
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対地電圧150Vを超える機器の使用
絶縁管の使用
貯蔵式電気温水器を水気のある場所に設置する際は、**給湯管および給水管に0.5m以上の絶縁管(推奨)**を取り付けることが望ましいです。
まとめ
深夜電力機器は、電気料金の節約やエネルギー効率の観点から非常に有用な設備ですが、その施設においては法令や内線規程に基づく厳格な基準が定められています。
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配線や電線の太さ
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遮断器の容量・設置方法
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接地工事や漏電遮断器の設置
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タイムスイッチの配置と配線
これらを正しく理解し、安全で確実な施工を行うことが、トラブルを未然に防ぐ最善策です。