出典(内線規程(JEAC8001-2022))より
漏電火災警報器とは?設置が必要な建物と設置方法をやさしく解説
近年、増加傾向にある電気火災。その原因の一つに「漏電」があります。漏電とは、本来電流が流れるべきではないところに電気が流れてしまう現象で、火災や感電の原因にもなりかねません。
そんな漏電による火災を未然に防ぐために活躍するのが、**「漏電火災警報器」**です。この装置は、漏電をいち早く感知して警報を鳴らし、火災の発生を防いでくれる頼れる存在です。
この記事では、漏電火災警報器の設置が義務づけられている建物の種類や面積、設置方法のポイントについて、やさしく解説していきます。
1. 漏電火災警報器の設置が義務づけられる建物とは?
漏電火災警報器の設置義務については、消防法施行令第22条や消防法施行規則第24条の3で定められています。
主に、次の2つの条件に当てはまる建物に設置が必要です。
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壁・床・天井などに金属製のラス張りやワイヤーラス張りが使われている建物
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低圧電路が設置されている建物
そのうえで、具体的な建物の種類や延べ面積によっても設置義務の有無が変わってきます。以下に分類してご紹介します。
1.1 重要文化財など
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法律で指定・認定された重要文化財、史跡、美術品などの建造物
1.2 延べ面積150㎡以上の建物
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旅館・ホテル・宿泊施設
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寄宿舎、下宿、共同住宅
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蒸気浴場・熱気浴場などの公衆浴場
1.3 延べ面積300㎡以上の建物
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旅館・ホテル・宿泊施設
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公会堂・集会場
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キャバレー、カフェー、ナイトクラブ
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遊技場、ダンスホール
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風俗営業店舗、カラオケボックス
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飲食店、料理店、待合
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百貨店・展示場・物品販売店
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病院・診療所・助産所
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老人ホーム・介護施設・障害者施設など
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保育所・幼稚園・特別支援学校
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工場・作業場
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映画・テレビスタジオ
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地下街
1.4 延べ面積500㎡以上の建物
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学校(小・中・高・大学など)
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図書館・博物館・美術館
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駅・空港
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神社・寺院・教会
1.5 複合用途の建物
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延べ面積が500㎡以上で、上記1.2または1.3の用途にあたる部分の合計床面積が300㎡以上のもの
1.6 延べ面積1,000㎡以上の建物
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倉庫
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一般の事業場・自動車車庫・駐車場
1.7 契約電流が50Aを超える場合
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上記の建物に該当するもの
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その他の事業場・車庫・駐車場
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複合用途の建物
💡 ワンポイント
金属板張りの木造建築物についても、上記と同様に漏電火災警報器の設置が推奨されています。
また、自治体ごとに独自の基準を設けている場合もありますので、詳しくは地元消防署や「日本火災報知機工業会」の資料などを確認しましょう。
2. 漏電火災警報器の設置方法とは?
続いては、実際の設置方法について見ていきましょう。これは消防法施行規則第4条および第15条に基づいています。
2.1 警報器の選定
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警戒電路の定格電流に合った機器を選びましょう。
2.2 変流器(電流を検出する部品)の設置
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建物の屋外電路やB種接地線に、点検しやすい場所へ取り付けます。
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屋外が難しい場合は、引込線に近い屋内電路でもOK。
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引込線取付点のすぐ後に設置するのが理想的です。
2.3 検出する漏えい電流の設定
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誤作動を防ぐために、建物の電気設備に合わせた適切な値に設定します。
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警報器は、電気的なノイズや振動の影響を受けにくい場所に設置するのが望ましいです。
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設定や試験は、乙種消防設備士の有資格者が行う必要があります。
2.4 受信機の設置
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操作電源は専用の回路から取り、開閉器には「漏電火災警報器用」と赤色で表示します。
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屋外に設置する際は、防水構造の受信機を使用するか、防水ボックスに収めます。
3. 設置例もチェックしてみましょう
実際の漏電火災警報器の設置イメージは、消防設備の参考図(例:1380-1図)を参照すると分かりやすくなります。設計や施工の前に確認しておくのがおすすめです。
4. まとめ|火災を未然に防ぐために、今できることを
漏電火災警報器は、電気の異常を素早く検知して、火災の発生を防ぐ大切な装置です。
建物の構造や用途に応じて設置義務がある場合はもちろん、義務がない場合でも、安全のために積極的に設置することが推奨されています。
正しい知識と基準をもとに、必要な場所に適切に設置することで、安心・安全な空間づくりにつなげていきましょう。