出典(内線規程(JEAC8001-2022))より
🌡️フロアヒーティングの施設基準と安全対策
床全体をじんわりと温めるフロアヒーティング(床暖房)は、快適な室内環境を実現するための人気設備です。しかし、電気を使用する以上、安全確保のためには法令や規格に基づいた設計・施工が不可欠です。本記事では、フロアヒーティングに関する施設基準と安全対策を項目ごとにわかりやすく解説します。
🏠フロアヒーティングとは?
フロアヒーティングとは、床下に発熱体(発熱線や電熱シート等)を設置し、床面から室内を暖める電気式暖房システムです。空気を乾燥させにくく、輻射熱でやわらかく暖まるのが特長です。
⚡対地電圧の基準
発熱線を使用するフロアヒーティングでは、対地電圧の上限が設けられています。
設置方法 | 対地電圧の制限 |
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発熱線を露出設置 | 300V以下 |
金属管などで保護する場合 | 150V以下(※例外あり) |
※絶縁変圧器+漏電火災警報器(交流300V以下)を設置すれば150Vを超えても可。
🔥発熱線および過電流遮断器の設置基準
✅温度管理と安全性
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発熱線の温度上限:原則80℃以下(特例で最大120℃まで許容)
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使用ケーブル:JIS規格に適合したMIケーブル推奨
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設置場所:人が触れにくく、損傷の危険がない場所に限定
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他設備への影響配慮、十分な離隔距離で火災防止
✅配線と接続
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接続方法:ろう付け、接続管など信頼性の高い手法を使用
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コンクリート内設置:金属管・合成樹脂管で保護
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がいし支持:取扱者以外が立ち入らない場所に限定し、JIS適合製品を使用
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接続ボックス:金属製または堅牢な合成樹脂製を用いる
🔌口出し線の施設基準
項目 | 内容 |
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使用ケーブル | MIケーブル/ビニルキャブタイヤ/クロロプレンキャブタイヤケーブル |
接続温度管理 | 高温にならないよう配慮 |
接続部の保護 | 金属管や耐熱金属で覆う |
接続方法 | ろう付け or 接続管による完全接続 |
絶縁処理 | 絶縁テープ・チューブ等+金属管内収納で二重保護 |
🔧発熱線の接続基準
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接続部の温度上昇防止
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接続の確実性:専用器具またはろう付け
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防護措置:鋼板製 or 合成樹脂製のボックスで外部損傷を防止
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絶縁対策:発熱線と同等以上の絶縁材で被覆
🟫電熱ボード・電熱シートの施設
電熱ボードや電熱シートも、発熱線および過電流遮断器の設置基準に準拠する必要があります。さらに、電気用品安全法の適合製品であることが求められます。
🧯開閉器・過電流遮断器の設置基準
✅基本要件
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専用の開閉器および過電流遮断器を設置
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過電流発生時に回路を遮断し、火災・機器破損を防止
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運用・保守時に安全な開閉操作が可能
※過電流遮断器に開閉機能があれば、開閉器の設置は不要
✅屋外設置時の保護措置
設置方法 | 要件 |
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製品構造 | 雨水侵入を防止する密閉構造 |
保護等級 | 防湿形/防雨形/防まつ形/防浸形(IPコード対応) |
⚙️接地工事の基準(D種接地)
金属管や接続ボックスを使用する場合は、D種接地工事が原則として必要です。
ただし、以下の条件を満たす場合は省略可能です:
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取扱者以外が立ち入れない場所
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乾燥した場所
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箱内で発熱線間の間隔が10cm以上ある
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加熱物と箱の壁面の離隔が1.5cm以上(最小1cm)ある
⚠️漏電遮断器の設置義務
原則として、フロアヒーティングの発熱線に電気を供給する回路には漏電遮断器を設ける必要があります。
✅省略可能なケース
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「発熱線の施設」規定に従い設置されている場合
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対地電圧が30V以下かつ乾燥した場所に設置されている場合
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条件付き施設方法に準拠している場合(例:第3540-3の6項)
✅設置する場合の基準
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定格感度電流:15mA以下
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動作時間:0.1秒以下
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電流動作型とする
※設置が困難な場合は漏電火災警報器を代替として設置します。
✅まとめ:安全なフロアヒーティング設置のために
項目 | 主なポイント |
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対地電圧 | 設置方法に応じて150Vまたは300V以下に制限 |
発熱線の選定 | JIS準拠・温度上限80℃(特例120℃) |
接続・絶縁処理 | ろう付け・接続管・金属ボックスなどで安全確保 |
接地工事 | 原則D種接地(条件次第で省略可) |
遮断器の設置 | 過電流・漏電遮断器を適切に配置 |
法規対応 | 電気用品安全法・技術基準に適合すること |