出典(内線規程(JEAC8001-2022))より
記事のテーマ
フロアヒーティングの施設基準と安全対策について解説する。
フロアヒーティングとは?
フロアヒーティングとは、床下に発熱体を設置し、床全体を暖める暖房方式のことです。
対地電圧
フロアヒーティングなどに電気を供給する電路の対地電圧は、以下の各号による必要があります。
1. 発熱線を露出する場合の安全基準
- 発熱線を露出して設置する際には、感電のリスクを最小限に抑えるため、対地電圧を300V以下に制限する必要があります。
2. 発熱線を金属管などに収める場合の安全基準
- 発熱線を金属管などの保護材に収めて設置する場合、より高い安全性を確保するため、対地電圧を150V以下に制限する必要があります。
- ただし、絶縁変圧器を使用し、かつ管路内部に漏電火災警報器を設置する場合は、この限りではありません。
- この場合、漏電火災警報器は交流300V以下で使用できるものに限ります。
発熱線及び過電流遮断器の施設
1. 温度管理と安全性の確保
発熱線の温度を常に監視できるように電線を配置し、異常な温度上昇を早期に検知できるようにします。
発熱線は、MIケーブルを使用し、JIS規格に適合した製品を選定します。
発熱線の温度は、原則として80℃以下に保つ必要があります。ただし、特別な条件下では120℃まで許容されます。
発熱線は、人が容易に触れない場所、損傷の危険がない場所に設置します。
他の電気設備や配管などに悪影響を与えないように配慮します。
発熱線と周囲の物体との間に適切な距離を確保し、火災を防ぎます。
2. 接続と保護
発熱線同士、または発熱線と電線の接続は、専用の接続管やろう付けを用いて確実に行います。
コンクリート内に発熱線を設置する場合は、金属管または合成樹脂管で保護し、JIS規格に準拠した施工を行います。
発熱線をがいしで支持する場合は、以下の点に注意します。
- 取扱者以外が立ち入らない場所、損傷の危険がない場所に設置します。
- 露出した場所に設置します。
- JIS規格に適合した製品を使用します。
- 接続点を設けないようにします。
- 接続ボックスは、金属製または堅牢な合成樹脂製を使用します。
- 接続部の温度上昇を抑え、絶縁性を確保します。
口出し線の施設
1. 口出し線の種類
原則として、MIケーブル、ビニルキャブタイヤケーブル、またはクロロプレンキャブタイヤケーブルを使用する必要があります。
ただし、発熱線の温度が120℃以下に保たれる場合は、他の適切なケーブルも使用可能です。
2. 口出し線の接続
接続部分の温度が異常に高くならないように注意して施設する必要があります。
接続部分は、金属管または金属製のボックスに収めるか、耐熱性の金属で覆う必要があります。
接続方法は、ろう付けまたは接続管を使用し、電気的に完全に接続する必要があります。
3. 口出し線の絶縁
接続部分は、絶縁テープ、絶縁チューブ、絶縁性のテープ、またはブチルゴムのケーブルで絶縁し、さらに金属管に収める必要があります。
発熱線の接続
フロアヒーティングなどに用いる発熱線の接続は、以下の各号により施設する必要があります。
1. 接続部分の温度管理
- 接続部分の温度が、接続部分以外の温度と比べて著しく高くならないように管理する必要があります。これは、過熱による火災や故障を防ぐために重要です。
2. 接続方法
- 接続部分の接続は、接続管などの専用器具を使用するか、ろう付けによって行う必要があります。これにより、確実な接続と安定した電気伝導を確保します。
3. 接続部分の防護
- 接続部分は、鋼板製または堅牢な合成樹脂製の材料で保護する必要があります。これにより、外部からの衝撃や損傷を防ぎ、安全性を高めます。
4. 絶縁
- 接続部分は、発熱線の絶縁物と同等以上の絶縁効力を持つ材料で十分に覆う必要があります。これにより、漏電や短絡を防ぎ、感電のリスクを低減します。
電熱ボード又は電熱シートの施設
フロアヒーティングなどに用いる電熱ボード又は電熱シートは、3542-2(発熱線及び過電流遮断器の施設)2項までの規定に準じるほか、電熱ボード又は電熱シートは、電気用品安全法の適用を受けるものである必要があります。
開閉器及び過電流遮断器
1. 専用の開閉器及び過電流遮断器の設置
フロアヒーティングなどの電気設備に電気を供給する電路には、安全のために専用の開閉器と過電流遮断器を設置する必要があります。
過電流遮断器は、電気回路に過剰な電流が流れた場合に回路を遮断し、電気機器の損傷や火災を防ぐ役割を果たします。
開閉器は、電気回路の開閉を行う装置であり、メンテナンス時などに電気の流れを遮断するために使用されます。
例外として、過電流遮断器に開閉機能がある場合は、過電流遮断器のみの設置でも可能です。
2. 屋外設置時の対策
屋外に開閉器及び過電流遮断器を設置する場合には、雨や湿気による故障を防ぐための対策が必要です。
以下のいずれかの方法で設置する必要があります。
設置場所の環境に合わせて、雨水などの浸入を防ぐ構造の製品を使用する。
防湿形、防雨形、防まつ形、防浸形などの保護等級(IPコード)に適合した製品を選定する。
接地
フロアヒーティングなどに施設する発熱線の金属管又は金属製のボックスにあっては、D種接地工事を施す必要があります。
ただし、次の場合は、この限りではありません。
- 電気温床などを施設する場所が、取扱者以外の者が容易に立ち入る場所又は人により発熱線を損傷するおそれがない場所でない場合。
- 電気温床などを施設する場所が、乾燥した場所である場合。
- 電気温床などを箱内に施設する場合であって、発熱線相互の間隔が10cm以上である場合。
加熱物と箱の壁面との離隔距離が1.5cmまで減じることができる場合。
発熱線を箱内に施設する場合は、発熱線と箱の壁面との離隔距離は、1cm以上とする必要があります。
漏電遮断器
フロアヒーティングなどに用いる発熱線に電気を供給する電路には、漏電遮断器を施設する必要があります。
ただし、次の場合は、この限りではありません。
a. 発熱線に電気を供給する電路が、3540-3(発熱線の施設)3項又は4項の規定により施設する場合。
b. 発熱線に電気を供給する電路が、対地電圧が30V以下で乾燥した場所に施設する場合。
c. 発熱線に電気を供給する電路が、3540-3(発熱線の施設)6項ただし書の規定により施設する場合。
発熱線に電気を供給する電路が、発熱線に施設する漏電遮断器にあっては、定格感度電流が15mA以下、動作時間が0.1秒以下、電流動作形とします。
上記の漏電遮断器を施設することが困難な場合、漏電火災警報器を施設する必要があります。
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フロアヒーティング、施設基準、電気工事、安全対策