出典(内線規程(JEAC8001-2022))より
系統連系型小出力太陽光発電設備の基礎知識
🔸 系統連系型小出力太陽光発電設備とは?
太陽電池モジュールで発電した電力を、パワーコンディショナを介して電力会社の配電線に接続する設備です。住宅や小規模施設に多く導入されており、余剰電力の売電にも対応しています。
📌 適用範囲
この章では、太陽電池モジュールから直流変換装置(パワーコンディショナ)を経由し、引込口装置に至るまでの配線など、発電設備に関する規定について解説します。
⚡ 対地電圧の基準
太陽電池モジュールと接続する電路の対地電圧は、内線規程「1300-1(電路の対地電圧の制限)」に基づく必要があります。
🔁 逆潮流による電圧降下の考慮
パワーコンディショナから引込点までの区間において、逆潮流が発生する際の電圧降下は、内線規程「1310-1(電圧降下)」の規定を遵守しなければなりません。
計算方法については「資料3-3」を参照してください。
🔧 太陽光発電設備の配線方法
1. 基本的な配線方式
通常はケーブルによる配線が推奨されます。ただし、乾燥した環境に限り、3501-1表に示された方式も採用可能です。
2. 直流回路の配線
電線を短絡電流から保護するために、過電流遮断器などを設置します。
なお、モジュールの短絡電流が非常に小さい場合は、この限りではありません。
3. モジュール間の接続
ねじ止め、圧着、またはそれと同等以上の接続方式で確実に電気接続し、接続点に張力がかからないよう配慮します。
使用する電線は、接続する電路に適合したものを選定し、過電流遮断器や逆流防止ダイオードの設置も必要です。
4. 交流回路の配線
太陽光発電設備に至る交流回路は、専用回路として過電流遮断器等で保護される必要があります。
また、識別しやすくするために回路の明確な表示が求められます。
パワーコンディショナから配線盤までの電線も、外傷や熱害から保護する措置が必要です。
5. 発電停止時の安全対策
早急に発電を停止する必要があるケースでは、中性線の電流バランスに注意が必要です。
三線式配線の場合、3本すべてに過電流引き外し素子を有する遮断器が必要になります。
高調波や短絡・逆流対応のZCBO(遮断器)については「資料3-6」をご参照ください。
6. 漏電遮断器の設置
発電設備に至る配線経路に漏電遮断器を設ける場合は、微弱電流による感電防止対策が必要です。
また、逆流防止装置の仕様については「資料3-5」を確認しましょう。
🏗 太陽電池モジュールの支持物の基準
支持物は、JIS C 8955(2004)「太陽電池アレイ用支持物設計標準」に基づき、十分な構造強度を持つ必要があります。
高さが4mを超える場合には、建築基準法における工作物の構造規定にも適合しなければなりません。
📦 中継端子箱の設置ポイント
中継端子箱を設ける際は、以下の条件を満たす必要があります。
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点検が容易な隠ぺい場所、または展開した場所に設置すること
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使用状態で内部に結露や浸水が発生しない構造であること
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内部機器の最高許容温度を超えない構造であること
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必要に応じて避雷素子などの機器を設置すること
アレイ出力開閉器・パワコン設置と接地の要点【太陽光発電設備の基本】
アレイ出力開閉器の設置ポイント
✅ 負荷側電路への近接設置
太陽電池モジュールに接続する負荷側の電路には、接続点から近い場所に開閉器を設けることが基本です。これにより異常時の即時遮断が可能になり、事故リスクを抑えられます。
✅ 規格への適合
アレイ出力開閉器は、**日本配線システム工業会規格 JWDS 0029(2013)「太陽光発電用直流開閉器」**に適合した製品を選ぶことが推奨されます。これにより、品質と安全性が確保されます。
✅ 設置場所の工夫
点検や操作のしやすさを考慮し、軒下や屋内の壁面などの保守しやすい場所に設置するのが望ましいです。
✅ 防水・防露対策
外箱は、結露や浸水に対する構造的対策が必要です。適切な防水・防露仕様を備えることで、長期的な安定稼働が可能になります。
✅ 過電流保護機能付き製品の活用
引込開閉器と漏電遮断器を兼用する場合は、過電流保護機能付き製品を選ぶことで、漏電だけでなく短絡などの過電流リスクにも対応できます。
パワーコンディショナの設置基準
インバータ・絶縁変圧器・系統連系保護装置など、パワーコンディショナに分類される機器は、点検可能な場所に設置することが義務付けられています。作業の安全性と保守性の確保が目的です。
接地工事の基礎知識
1. 接地工事の必要性
太陽光設備に使用される機械器具の鉄台・外箱・架台は、感電防止のために電気設備技術基準1350-2表に基づく接地工事を行う必要があります。
2. C種接地の例外(特定条件下での緩和)
以下の全ての条件を満たす場合、C種接地工事の接地抵抗値は100Ω以下に緩和できます:
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直流電路が接地されていない
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接続インバータの交流側に絶縁変圧器を設置している
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太陽電池モジュールの合計出力が10kW以下
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特定機器(太陽電池・配線器具・インバータ・避雷器以外)が直流電路にない
3. 自動遮断装置による緩和
C種接地工事で0.5秒以内に地絡を遮断する装置を設ける場合、接地抵抗値を500Ω以下に緩和可能です。
4. D種接地工事の接地線
D種接地においては、1.6mm以上のIV電線またはCVケーブルを接地線に使用するのが推奨されています。
電気事業者との技術協議
✅ 協議の必要性
太陽光発電を含む電気設備の施設には、電気事業者との事前協議が必須です。特に分散型電源のように系統に影響を与える設備では、専門技術に基づく調整が求められます。
✅ 協議の根拠となる基準
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「電気設備に関する技術基準を定める省令の解釈 第8章」
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「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン(資源エネルギー庁)」
これらの基準に従い、系統連系の安定性と安全性を確保します。
✅ 使用機器の推奨
使用するインバータや保護装置は、技術要件に適合し認証を受けた製品を選定することが望ましく、協議の進行もスムーズになります。
✅ 参照すべき技術資料
協議の際は、**(一社)日本電気協会が制定したJEAC 9701(2016)「系統連系規程」**を参照します。技術的根拠を共有することで、協議の正確性と信頼性が高まります。
🔍まとめ|安全で信頼性の高い太陽光発電設備のために
アレイ出力開閉器やパワコンの設置、接地工事、そして電気事業者との協議においては、基準やルールに沿った確実な対応が不可欠です。とくに法令やガイドラインに準拠した設備選定・設置は、長期的な安全運用に直結します。
太陽光発電システムを構築する上で、一つひとつのポイントを正確に押さえることが、安定稼働とトラブル予防の鍵です。