技術図書館電気で腐食を止めるが、周りの金属にも回る防食回路はDC60V以下、陽極は地中75cm以上に埋設。周囲の埋設金属への電食障害まで一体で考えるこの資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は連載「内線規程の解釈と解説」(全119回)の1本です。
全体像:内線規程【090】電気防食施設
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出典:内線規程(JEAC8001-2022)より

電気防食は、金属が腐食する電気化学反応を制御することで、海洋構造物・タンク・埋設配管・橋梁などの金属構造物を長期間保護する技術です。電圧の制限、陽極と配線、接地と電食対策について施設基準が定められています。要点を3つに整理します。

電気防食施設の施設3つのポイント(電圧制限・陽極と配線・D種接地と電食対策)
結論
①電源電圧は低圧(300V以下)、防食回路の最大電圧はDC60V以下、陽極周辺の電位差は直流10V以下、地表・水中の電位差は5V以下。②陽極は地中に埋設(深さ75cm以上)、陽極リード線は直径1.6mm以上の銅線。③金属部にD種接地工事(被防食体を接地極にする場合は接地抵抗10Ω以下で可)、他構造物への電食障害は接続又は絶縁で防止。
この記事でわかること
✔ 1. 電圧の制限
✔ 2. 陽極と配線の基準
✔ 3. 接地と電食対策
ペン太ペン太
電気防食って、金属に電気を流してサビを防ぐ仕組みなんですか?
ハリタハリタ
電気化学反応を制御して構造物を守る技術です。電源は低圧、防食回路は直流60V以下が条件です。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 防食回路の最大電圧と、地表・水中の電位差はそれぞれいくつ以下か
  • 陽極の埋設深さは、いくつ以上必要か
  • 被防食体を接地極として使えるのは、接地抵抗がいくつ以下のときか
この記事でわかること
数値の一覧は、1つ目の項の早見表にまとまっています。

1. 電圧の制限

トピック1:電圧の制限
区分電圧の制限
電源電圧低圧(300V以下)
防食回路の最大電圧DC60V以下
陽極周辺の電位差直流10V以下
地表・水中の電位差5V以下
電圧の制限 早見表
  • 電源電圧は低圧(300V以下)とする
  • 防食回路の最大電圧はDC60V以下
  • 陽極周辺の電位差は直流10V以下(制限緩和には防護が必要)
  • 地表・水中の電位差は5V以下
ペン太ペン太
陽極は地面に浅く埋めても大丈夫ですよね?
ハリタハリタ
75cm以上の深さに埋設します。リード線も1.6mm以上の銅線と決まっています。

2. 陽極と配線の基準

トピック2:陽極と配線の基準
  • 陽極は原則として地中に埋設(水中を除く)し、埋設深さは75cm以上
  • 陽極リード線は直径1.6mm以上の銅線、その他の電線は直径2mm以上の軟銅線又はIV線・ビニル外装ケーブルなど
  • 地中配線は地中電線路基準に準拠。車両荷重がない場所は30cm以上の埋設+保護板で保護可能
  • 水中配線は金属管又は堅牢な合成樹脂管で保護(損傷の恐れがなければ省略可能)
配線の場所施設方法
地中地中電線路基準に準拠。車両荷重がない場所は30cm以上の埋設+保護板
水中金属管または堅牢な合成樹脂管で保護(損傷の恐れがなければ省略可)
陽極リード線直径1.6mm以上の銅線
その他の電線直径2mm以上の軟銅線、またはIV線・ビニル外装ケーブルなど
ここまでのポイント
  • 陽極は原則として地中に埋設し(水中を除く)、埋設深さは75cm以上
  • 陽極リード線は直径1.6mm以上の銅線
  • その他の電線は直径2mm以上の軟銅線、またはIV線・ビニル外装ケーブルなど
  • 地中配線は地中電線路基準に準拠する。車両荷重がない場所は30cm以上の埋設+保護板で保護できる
  • 水中配線は金属管または堅牢な合成樹脂管で保護する(損傷の恐れがなければ省略可能)

3. 接地と電食対策

トピック3:接地と電食対策
  • 金属製外箱・金属管などにD種接地工事を施す。被防食体を接地極にする場合は接地抵抗が10Ω以下であれば使用可
  • 電気防食により周囲の埋設金属構造物に電食障害を与える恐れがあるため、他の構造物と被防食体を電気的に接続、又は絶縁・遮断など適切な措置を講じて防止する
たとえ話
電気で金属のサビを止める仕組みですが、流した電気が周りの配管に回ると逆にサビを早めてしまいます。だから電圧を細かく制限し、周囲との電食対策まで行うわけです。
見習いペン太
見習いペン太
電気でサビを防ぐって、本当にそんなことできるの?
はりた
はりた
できるよ。ただし防食回路はDC60V以下、地表・水中の電位差は5V以下に抑える。周りの金属への電食障害も接続や絶縁で防ぐんだ。
電気防食施設の電圧の制限と陽極の埋設深さを示した図
電気防食回路の使用電圧は直流60V以下、電源装置は低圧300V以下。陽極と周囲1m以内の任意点との電位差は10V以下、地表・水中の任意の点相互間は5V以下。陽極は地中75cm以上の深さに埋設し、車両その他の重量物の圧力を受けない場所では30cm以上+堅ろうな保護板でよい。
取り違えやすいところ正しくは
陽極は浅く埋めても効果は同じ埋設深さは75cm以上
電圧は電源電圧だけ見ればよい防食回路DC60V以下、陽極周辺10V以下、地表・水中5V以下も守る
被防食体はそのまま接地極に使える接地抵抗が10Ω以下であることが条件
自分の設備の中だけ考えればよい周囲の埋設金属構造物への電食障害を防ぐ措置が必要
水中配線は保護しなくてよい金属管や堅牢な合成樹脂管で保護する(損傷の恐れがなければ省略可)
ここまでのポイント
  • 金属製外箱・金属管などにD種接地工事を施す
  • 被防食体を接地極にする場合は、接地抵抗が10Ω以下であれば使用できる
  • 電気防食により周囲の埋設金属構造物に電食障害を与えるおそれがある
  • 他の構造物と被防食体を電気的に接続、または絶縁・遮断など適切な措置を講じて防止する

よくある質問(FAQ)

トピック4:よくある質問
Q. 電気防食とは何ですか?
A. 鋼などの金属が腐食する電気化学反応を制御することで、金属構造物の腐食を防ぐ技術です。海洋構造物・タンク・埋設配管・橋梁などに用いられます。
Q. 電圧の制限はどうなっていますか?
A. 電源電圧は低圧(300V以下)、防食回路の最大電圧はDC60V以下、陽極周辺の電位差は直流10V以下、地表・水中の電位差は5V以下です。
Q. 陽極と配線の基準は?
A. 陽極は原則地中に埋設(埋設深さ75cm以上)。陽極リード線は直径1.6mm以上の銅線、その他は直径2mm以上の軟銅線又はIV線等です。水中配線は金属管又は堅牢な合成樹脂管で保護します。
Q. 接地と電食障害への対策は?
A. 金属部にD種接地工事を施します(被防食体を接地極にする場合は接地抵抗10Ω以下で可)。周囲構造物への電食障害は、電気的接続又は絶縁・遮断などの措置で防止します。

まとめ|電圧を抑え、周囲への影響まで見る

電気防食は、流した電気が周囲の埋設金属構造物に回ると逆にサビを早めてしまうため、電圧を細かく制限し、電食障害の防止措置までを一体で考えます。

確認する順番見るところ基準
Step1電源電圧低圧(300V以下)
Step2防食回路の電圧DC60V以下
Step3電位差陽極周辺は直流10V以下、地表・水中は5V以下
Step4陽極と配線埋設深さ75cm以上、リード線1.6mm以上の銅線
Step5接地と電食対策D種接地(被防食体利用は10Ω以下)、周囲構造物への措置

埋設物が多い敷地では、防食の効果よりも周囲への電食障害のほうが問題になることがあります。埋設図を突き合わせて、接続するのか絶縁するのかを先に決めておくと確実です。

📘 この記事の根拠規程|解説の原文は内線規程(JEAC8001-2022)に掲載されています。実務で使う方は手元に1冊どうぞ → 電気設備の必携書籍おすすめ4選【2026年版】

ペン太ペン太
周りの配管への影響は何を確認すればいいですか?
ハリタハリタ
電食障害の防止です。接続または絶縁・遮断の措置で周囲の構造物を守れば安心ですよ。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。