出典(内線規程(JEAC8001-2022))より
この記事に書かれていること
幹線側
〔注1〕引込線取付点から引込口までの部分も幹線に含めて計算すること。
〔注2〕電気使用場所内に設けた変圧器から供給する場合は,その変圧器の二次側端子から主配電盤までの部分も幹線に含める。
2次側
幹線以降負荷までのケーブル
基本的に2次側を2%固定とし、幹線側は総亘長に合わせて降下率が変動します。しかしこれはあくまで基準値であるため電圧降下率の振り分けは各自の設計意図に基づき振り分け可能です。
電圧降下を学ぼう!
🎯この章で学べること
ハリタ先生
今回は「電圧降下」について学びます。電気の安全を守るための、とっても大切なルールですよ!
ペン太
はい、頑張ります!
この章の学習目標
- ✓電圧降下の基本的な概念と影響を理解する。
- ✓幹線と分岐回路、それぞれの許容値を覚える。
- ✓電線のこう長による特例と計算に含めるべき範囲を知る。
ℹ️基本の解説
ハリタ先生
ペン太君、電圧降下について知っているかな?
ペン太
ちょっと難しそうですが、気になります!
ハリタ先生
大丈夫だよ!身近な例で説明するから一緒に見ていこう。
そもそも電圧降下とは?
電線に電気が流れるときに、電線自体の抵抗によって電圧が少しずつ下がってしまう現象のことです。水道のホースをイメージすると分かりやすいです。蛇口から出た直後は水の勢いが強くても、ホースが長くなればなるほど、摩擦によって出口での勢いが弱くなりますよね。電気もこれと似ていて、発電所から送られた高い電圧も、長い電線を通って家庭に届く頃には少し電圧が下がってしまいます。この電圧降下が大きすぎると、照明が暗くなったり、ちらついたりする、モーターなどの機器が正常に動作しなくなる、家電製品の性能が落ちたり、寿命が短くなったりする、といった問題が起こる可能性があります。そのため、法律(電気設備技術基準)や内線規程で、電圧降下は一定の値以下に抑えるよう定められています。
ハリタ先生のポイント解説
電圧降下は「電線の抵抗」と「電線の長さ(こう長)」が主な原因なんだ。電気工事士の仕事では、この電圧降下が大きくなりすぎないように、適切な電線の太さや長さを計算することが大切だよ。
原則:許容値は幹線と分岐でそれぞれ2%以下
低圧配線路の電圧降下は、電力を供給する幹線と、そこから分岐して照明やコンセントにつながる分岐回路の両方で、それぞれ標準電圧の**2%以下**に抑える必要があるのです。
「幹線」と「分岐」の違い
これを人間の血管に例えてみましょう。
- 幹線 (Feeder): 電柱から引き込んだ電気を、建物のメインの分電盤まで送る、太くて重要な電線です。例えるなら、全身に血液を送る**「大動脈」**のようなものです。
- 分岐回路 (Branch Circuit): 分電盤から、各部屋のコンセントや照明器具など、実際に電気を使う場所へ電気を分配する電線です。例えるなら、大動脈から分かれて、体のすみずみまで血液を届ける**「毛細血管」**のようなものです。
例外:許容値が3%になるケース
家や工場など「電気使用場所」の中に変圧器を設けている場合、**幹線の**電圧降下は**3%以下**とすることができるのです。変圧器が近い分、電圧の調整がしやすいためです。
ハリタ先生のポイント解説
構内にキュービクルがある場合はこれに該当するよ。一方で、マンションなどで低圧で電気を引込んでいる場合は、変圧器は構外と判断され、一般送配電事業者から低圧で電気の供給を受けている場合と同じように考えるんだ。
特に重要なポイント:計算に含める範囲
電圧降下の計算で忘れやすいのが、電線のどの範囲を対象にするかです。
なぜ幹線と分岐で電圧降下を分けるの?
これは「全体の電圧降下が許容値を超えないように、幹線と分岐回路で下がる電圧をうまく分担しましょう」という考え方です。内線規程では、電線全体の電圧降下の許容値が定められており、その中で幹線と分岐回路の目安が示されています。
配線の種類 | 電圧降下の許容値(目安) |
---|---|
幹線 | 2% 以下 |
分岐回路 | 2% 以下 |
合計 | 4% 以下 (状況により5%〜7%まで許容) |
重要なのは合計の値です。例えば、幹線部分の電圧降下が1%で済んだ場合、分岐回路では残りの3%(4% – 1%)まで許容できる、というように柔軟に設計できます。
振り分けるメリット
- 経済的な設計ができる 💡: すべての電線を太くするのではなく、役割に応じて適切な太さの電線を選べるため、コストの無駄を省くことができます。
- 設計と計算がしやすい 📐: 「分電盤まで」と「分電盤から先」で分けることで、計算がシンプルになり、設計ミスを防ぎやすくなります。
- 将来の増設に対応しやすい 🔧: 幹線の電圧降下に余裕があれば、分岐回路を増設しても全体の許容値をクリアしやすくなります。
ハリタ先生のポイント解説
設計時は基本、分岐側を2%に固定して考えることが多いよ。これは、分岐側のケーブル距離や負荷容量がまちまちなので、どんな状況にも対応できるようにするためなんだ。特にマンションのような場合、各住戸への二次側の距離が限定的なため、二次側を1%に抑えることで幹線側に余裕が生まれて、幹線のサイズを小さくする検討が可能となり、経済的な設計につながるんだ。
🔍重要ポイント
ハリタ先生
ここで、特に覚えておきたい大切なポイントをカードにまとめたよ。一緒に確認していこう!
ペン太
はい!カードなら楽しく覚えられそうです!
📏長距離配線の特例
ハリタ先生
電線が長くなると、電圧降下はもっと大きくなるのですよ。そんなときは、特別なルールがあります。スライダーを動かして、こう長ごとの許容値を確認してみましょう。
こう長シミュレーション
現在のこう長: 100 m
ペン太
電線が長くなると、許容値も変わるんですね!
供給変圧器の二次側端子または引込取付点から最も遠い負荷までの電線のこう長が60mを超える場合は、以下の表にあるように、電圧降下の許容値が変わります。
電線のこう長 (m) | 電圧降下 (%) | |
---|---|---|
電気使用場所内に設けた 変圧器から供給する場合 |
一般送配電事業者から低圧で 電気の供給を受けている場合 |
|
120m 以下 | 5%以下 | 4%以下 |
200m 以下 | 6%以下 | 5%以下 |
200m 超過 | 7%以下 | 6%以下 |
🤔質問コーナー
ハリタ先生
ペン太君からの質問だね。さあ、一緒に考えてみようか。
ペン太
ハリタ先生、幹線と分岐で降下率を振り分けるって、どういうことなんですか?
ハリタ先生
これはね、全体の許容値を超えないように、幹線と分岐回路で下がる電圧をうまく分担するという考え方だよ。具体的な例で見てみようか。
全体の許容値を4%として考えてみましょう。
例1:幹線が短く、分岐が長い場合
分電盤が建物の入り口近くにあり、幹線部分の配線距離が短いケースです。
- 幹線の電圧降下: 計算したら 1% だった。
- 分岐に使える電圧降下: 全体許容値 4% – 幹線の実績 1% = 3%
結論: この場合、分岐回路は通常より長い配線にしたり、少し細い電線を選んだりする設計上の余裕が生まれます。
例2:幹線が長く、分岐が短い場合
大きな工場の敷地などで、受電点から建屋内の分電盤までの距離が非常に長いケースです。
- 幹線の電圧降下: 計算したら 3% になってしまった。
- 分岐に使える電圧降下: 全体許容値 4% – 幹線の実績 3% = 1%
結論: この場合、分岐回路の電圧降下を1%以下に厳しく抑える必要があります。そのため、分岐回路の電線を太くしたり、配線距離を短くするなどの工夫が求められます。
ハリタ先生のポイント解説
設計時は基本、分岐側を2%に固定して考えることが多いよ。これは、分岐側のケーブル距離や負荷容量がまちまちなので、どんな状況にも対応できるようにするためなんだ。特にマンションのような場合、各住戸への二次側の距離が限定的なため、二次側を1%に抑えることで幹線側に余裕が生まれて、幹線のサイズを小さくする検討が可能となり、経済的な設計につながるんだ。
🧠重要用語フラッシュカード
ペン太
カードで繰り返し練習すれば、しっかり覚えられそうです!
カードをクリックして、用語と意味を確認し、記憶を定着させましょう。
✔️理解度チェックテスト
ハリタ先生
さあ、最後の仕上げです!テストで実力を試してみましょう。
電圧降下
1.低圧配線中の電圧降下は、幹線および分岐回路において、それぞれ標準電圧の2%以下とすること。ただし、電気使用場所内の変圧器により供給される場合の幹線の電圧降下は、3%以下とすることができる(勧告)

幹線の範囲と電圧降下の考え方

電気設備の設計では、「幹線」に含める範囲や「電圧降下」の評価が非常に重要です。
ここでは、内線規程などに記載されている注釈事項(注1~注4)を、初心者向けにやさしく解説します。
✅ 注1:引込線取付点から引込口までの部分も「幹線」に含む
建物に電気を引き込む際、**電柱から建物側に引き込まれる線(引込線)**のうち、
【電柱の引込線取り付け点~建物の引込口】までの区間も、「幹線」として扱います。
📌 ポイント:
-
設計上、この区間も幹線の一部として「電圧降下」や「許容電流」の確認を行う必要があります。
✅ 注2:構内変圧器がある場合、二次側端子から主配電盤までが「幹線」
建物内に自家用変圧器(高圧→低圧に変換する機器)を設置している場合、
変圧器の二次側端子(低圧側の出力)から主配電盤までの配線が「幹線」に該当します。
📌 ポイント:
-
幹線長にこの部分を含めないと、電圧降下計算が不正確になります。
✅ 注3:電圧降下の計算には「資料1-3-2」を参照する
幹線設計で重要な「電圧降下」は、次の条件で大きく変わります:
-
配線方式(地中埋設・管路・ケーブルなど)
-
負荷電流(使う機器の合計電流)
-
電線の太さと材質(銅・アルミ)
📎 計算の基準値や具体的な表は「資料1-3-2」を参考にしましょう。
✅ 注4:太陽光発電の「逆潮流」も電圧降下に考慮が必要

系統連系型の小規模太陽光発電では、**パワーコンディショナ(PCS)**から電力が逆流(逆潮流)して電力会社側に流れることがあります。
この場合も、
-
パワコン~電柱の引込線取付点までの区間で生じる電圧降下
を評価する必要があります。
📎 詳細は「3594節」に規定があります。
📝 幹線と電圧降下の注意点
注釈 | 内容 |
---|---|
注1 | 引込線の取り付け点から引込口も幹線として計算 |
注2 | 構内変圧器がある場合、二次側端子から主配電盤までを幹線に含める |
注3 | 電圧降下の計算には資料1-3-2を参照 |
注4 | 太陽光発電の逆潮流による電圧降下は3594節を参照 |
ケーブル亘長が長い場合

2.供給変圧器の二次側端子(電気事業者から低圧で電気の供給を受けている場合は、引込線取付点)から最遠端の負荷に至る電線のこう調が60mを超える場合の電圧降下は、前項にかかわらず、負荷電流により計算し1310-1表によることができる(勧告)
こう長が60mを超える場合の電圧降下

太陽光発電設備の電圧降下
〔注〕系統連系型小出力太陽光発電設備からの逆潮流によるパワーコンディショナから引込線取付点までの電圧降下は,3594節(系統連系型小出力太陽光発電設備の施設)を参照のこと。