出典(内線規程(JEAC8001-2022))より
この記事に書かれていること
電線の許容電流は、周囲温度と本数によって決まっており負荷電流値以上の許容電流を持つサイズを選定する必要があります。
🔌許容電流と電線選定の基本ガイド
電気設備を安全・確実に運用するためには、**電線がどれだけの電流に耐えられるか(=許容電流)**を正しく把握しておくことがとても重要です。
この記事では、許容電流の考え方や、具体的な算定方法、使用する電線の選び方について、初心者の方にもわかりやすく解説します。
許容電流の計算方法
🎯この章で学べること
ハリタ先生
こんにちは、ペン太くん!今日は電気工事士の試験でとっても大事な、「許容電流」について学んでいきましょう。
ペン太
許容電流ですか?なんか難しそうです…。
この章の学習目標
- ✓許容電流の基本的な考え方を理解する。
- ✓電線の種類や周囲の環境に応じた許容電流の計算方法を知る。
- ✓電圧降下を防ぐための対策を学ぶ。
ℹ️基本の解説
ハリタ先生
許容電流とは、電線が安全に流すことのできる最大の電流のことです。電線が熱くなりすぎると火災の原因にもなるので、この値を守ることが大切なんですよ。
ペン太
なるほど、安全に使うための限界値なんですね!
許容電流の基本的な考え方
許容電流は、電線が発熱しても絶縁被覆が溶けたり、劣化したりしないように定められています。周囲温度が高かったり、複数の電線をまとめて配線したりすると、熱が逃げにくくなり許容電流は小さくなります。
🔍重要ポイント
ハリタ先生
周囲の温度や電線の本数によって、流せる電流の量が調整されるんだ。これを「許容電流補正係数」と言います。
ペン太
係数をかけるだけで計算できるんですか?便利ですね!
📋電線の種類と参照先
許容電流の計算において、使用する電線の種類によって基準が異なります。以下のリストで主な電線と関連する規定を確認しましょう。
電線の種類 | 関連する規定・基準 |
---|---|
60℃ Vビニル絶縁電線 VVケーブルなど |
**1340-1表**および**1340-2表**に記載の許容電流 |
600Vビニル絶縁電線(IV) 600Vポリエチレン絶縁電線(PE) |
許容電流に**1340-3表**に示す許容電流補正係数を乗じた値 |
RB電線(天然ゴム混合物以外) | 許容電流に**1340-3表**に示す許容電流補正係数を乗じた値 |
コード及びけい光灯電線 | **1340-5表**に記載の許容電流 |
600V耐熱性ポリエチレン絶縁電線(IE/F) 600V架橋ポリエチレン絶縁電線(IC/F) |
600Vビニル絶縁電線および600V架橋ポリエチレン絶縁電線と同様に扱う |
キャブタイヤケーブル | 絶縁物の最高許容温度が60℃の場合、**1340-6表**に記載の許容電流。それ以外は**1340-3表**または**1340-7表**を参照。 |
🌡️周囲温度による許容電流の計算例
周囲温度が30℃を超える場所では、電線の許容電流は補正係数によって減少します。以下の計算式と例を参考に、許容電流の求め方を確認しましょう。
許容電流減少係数の計算式
※ $\theta$ は周囲温度(℃)
簡易的な計算例
基準の許容電流を**35A**とします。
周囲温度が**40℃**の場合、補正係数は**0.816**となり、許容電流は**35A × 0.816 ≒ 28.56A**となります。
➖電流減少係数
同一の管やダクト内に複数の電線をまとめて配線すると、熱がこもりやすくなり、電線が過熱する危険があります。そのため、電線の本数に応じて許容電流を減らすための「電流減少係数」を乗じる必要があります。この係数は、電線の本数が増えるほど小さくなります。
電線本数の設定
計算結果
電流減少係数: 1.00
同一管内の電線数 | 電流減少係数 |
---|---|
3本以下 | 0.70 |
4本 | 0.63 |
5本又は6本 | 0.56 |
7本以上15本以下 | 0.49 |
16本以上40本以下 | 0.43 |
41本以上60本以下 | 0.39 |
61本以上 | 0.34 |
💡ペン太の質問コーナー
ペン太
先生、許容電流が小さくなるって、具体的にどれくらい変わるんですか?
ハリタ先生
良い質問だね!例えば、周囲温度が40℃になると、許容電流は元の約81.6%に減少します。電線を5本まとめて配線すると、さらに約56%まで減少するんですよ。
ペン太
そんなに減るんですね!ちゃんと計算しないと危ないんだな。
🧠重要用語フラッシュカード
ペン太
先生、大事な用語を忘れちゃいそうです。復習したいな。
カードをクリックして、用語と意味を確認し、記憶を定着させましょう。
✔️理解度チェックテスト
ハリタ先生
ここまで学んだことをクイズで確認してみましょう。頑張ってください!
✅1. 許容電流とは?
許容電流とは、電線が安全に流せる最大の電流値のこと。これを超える電流が流れると、電線が発熱して絶縁が破壊されたり、火災の原因になるおそれがあります。
✅2. 許容電流の算定で重要な3つのポイント
許容電流を正しく求めるには、以下の条件を考慮する必要があります:
✅3. IV電線・VVケーブルの許容電流
「IV電線」「VVケーブル」は最もよく使われる一般的な電線です。
絶縁体は60℃のビニル絶縁で、**許容電流の基準は「1340-1表」および「1340-2表」**に示されています。
例:
-
IV 2.0mm² → 約27A(1回路あたり)
-
IV 3.5mm² → 約35A(1回路あたり)
※上記は一例で、配線方法や周囲温度により変動します。
✅4. その他の電線は「補正係数」を掛けて求める
ポリエチレンやふっ素樹脂など、特殊な絶縁体を使った電線では、
許容電流に補正係数を掛けて算出する必要があります。
📌算定ステップ
-
1340-1表 or 1340-2表で基準値を確認
-
1340-3表の補正係数を掛ける(絶縁材料や敷設条件により異なる)
-
小数点以下1位を四捨五入する
✅許容電流補正係数の一例(1340-3表より)
絶縁物の種類 | 施設場所 | 補正係数 |
---|---|---|
ポリエチレン(PE) | 屋内 | 1.10 |
ふっ素樹脂(FEP等) | 屋外 | 1.25 |
例えば、IV 2.0mm²(基準27A)に対してふっ素樹脂絶縁で屋外なら…
👉 27A × 1.25 = 33.75A → 約34A
🔍ポイント
-
許容電流は「配線方法+電線の種類+温度条件」で変わる
-
絶縁体の温度グレードが高いほど、多くの電流を流せる
-
「IV電線」は60℃を前提、「PEやFEP」は高温対応のため補正必要
-
間違えた選定は事故・火災の原因になるので要注意!
📘設計時の注意点
-
許容電流の算定結果は必ず四捨五入して使用
-
実際の施工では、電圧降下や配線距離も加味して設計する
-
内線規程に基づく正確な選定が重要!