出典(内線規程(JEAC8001-2022))より
記事のテーマ
電動機の負荷算定と選定方法について解説する。
電動機の負荷算定とは?
電動機の負荷算定とは、電動機を使用する際に必要な電気容量を計算することです。適切な負荷算定を行うことで、安全で効率的な電気配線設計が可能になります。
電動機の負荷算定方法
汎用電動機の場合
銘板基準:個々の電動機の銘板に記載されている定格電流(全負荷電流)を基準としてください。
規約電流:定格出力に応じた規約電流を定格電流として適用することも可能です。
特殊用途電動機およびインバータ使用の場合
銘板と特性:エレベータ、エアコンディショナ、冷凍機などの特殊な用途の電動機や、インバータを使用する場合は、銘板に表示された定格電流に加えて、電動機の特性や使用方法も考慮する必要があります。
エレベータ用電動機:起動時や加速時の電流値は、製造業者や制御方式によって大きく異なるため、必ず製造業者の技術資料を参照してください。
圧縮機用電動機(パッケージ形エアコンディショナ)
圧縮機専用組込電動機を使用する場合は、銘板に表示された運転電流の1.2倍の電流値を定格電流とすると良いでしょう。
圧縮機用電動機(ウォーターチリングユニット、冷凍機)
ウォーターチリングユニットや冷凍機では、運転条件や運転初期(プルダウン)によって電流値が大きく変動するため、製造業者の技術資料を参考にしてください。
インバータ使用電動機
インバータを使用した場合の定格電流は、製造業者によって異なるため、必ず製造業者の技術資料を参照してください。
電動機の特性と規約電流
電動機の特性については、資料3-7-1及び資料3-7-2を参照してください。
規約電流については、資料3-7-3を参照してください。
電動機の分岐回路の施設方法
原則:電動機一台ごとに専用の分岐回路を設ける
電動機を安全に使用するためには、原則として一台ごとに専用の分岐回路を設ける必要があります。これは、電動機が他の機器に比べて大きな電流を必要とし、起動時などには特に過電流が発生しやすいため、専用の回路で保護する必要があるためです。
例外:専用の分岐回路を設けなくてもよい場合
ただし、以下のいずれかに該当する場合は、専用の分岐回路を設けなくてもよい場合があります。
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15Aまたは20Aの分岐回路で使用する場合
- 15Aまたは20Aの配線用遮断器で保護された分岐回路で使用する場合、複数の電動機を接続することができます。
- ただし、これらの回路に接続する電動機の定格容量の合計は、安全のため2.2kW以下にすることが推奨されます。
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過負荷保護装置を設けた電動機を複数台使用する場合
- 各電動機に個別の過負荷保護装置が設置されている場合、複数の電動機を同一の分岐回路に接続できます。
- この場合、一製造装置のユニット内に限定して適用することが望ましいです。
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特定の条件下で複数台の電動機を一体として使用する場合
- 工作機械、クレーン、ホイストなどの装置で、複数台の電動機が一組として組み込まれ、自動制御または作業者の制御によって運転される場合。
- または、複数台の電動機の出力軸が機械的に接続され、単独で運転できない場合。
まとめ
- 電動機は、安全な使用のために原則として一台ごとに専用の分岐回路を設ける必要があります。
- ただし、特定の条件下では、複数台の電動機を同一の分岐回路に接続することも可能です。
分岐開閉器及び分岐過電流遮断器の施設
1. 開閉器と過電流遮断器の設置の必要性
- 電動機に電気を供給する分岐回路には、安全確保のため、開閉器と過電流遮断器の設置が義務付けられています。これは、電気設備の安全性を定めた「3605-4(分岐回路の開閉器及び過電流遮断器の取付け)1項」という規定に基づいています。
2. 分岐開閉器の定格電流
- 分岐開閉器の定格電流は、過電流遮断器の定格電流以上のものを選定する必要があります。これにより、回路の安全な開閉を確保します。
3. 過電流遮断器の選定基準
定格電流の計算:
- 電動機の定格電流の3倍(50A超の場合は2.75倍)に、他の電気機器の定格電流の合計を加えた値以下であること。
- 電動機の始動電流によって動作しない定格であること。
- 過負荷保護装置との協調が取れる場合は、電線の許容電流の2.5倍以下にすることも可能です。
電線の許容電流が100A超の場合:
- 計算値が標準の定格にない場合は、直近の上位の定格を選定できます。
電動機専用回路の場合:
- 「1360-4(過負荷保護装置と短絡保護専用遮断器又は短絡保護専用ヒューズとを組み合わせた装置の規格及び使用の制限)」に適合する遮断器を使用する場合、電線の許容電流以下の定格電流を選定できます。
保護協調:
- 過電流遮断器は、過負荷保護装置と適切に連携し、回路全体を保護する必要があります。
まとめ
電動機回路の安全性を確保するためには、適切な開閉器と過電流遮断器の選定・設置が不可欠です。選定にあたっては、以下の点を考慮する必要があります。
- 回路の安全基準に適合すること
- 電動機の特性(定格電流、始動電流)を考慮すること
- 他の保護装置との協調性を確保すること
電動機用分岐回路の電線の太さ
1. 電線の許容電流とは
電線に流すことができる最大の電流値のことです。電線に許容電流を超える電流が流れると、発熱により絶縁被覆が損傷し、火災や漏電の原因となる可能性があります。
2. 電動機用分岐回路の電線
- 電動機に電気を供給する分岐回路の電線は、過電流遮断器の定格電流の1/2.5(40%)以上の許容電流が必要です。
- がいし引き配線の場合、例外的にがいし引き配線の許容電流値を使用できます。
3. 連続運転する電動機に対する電線
電動機の定格電流によって、必要な電線の太さが変わります。
- 定格電流が50A以下:定格電流の1.25倍以上の許容電流
- 定格電流が50A超:定格電流の1.1倍以上の許容電流
2台以上の電動機に電気を供給する場合、幹線の太さに関する規定に従う必要があります。
4. 短時間・断続・周期・変負荷使用の電動機
これらの電動機では、定格電流ではなく、配線の温度上昇を考慮した熱的に等価な電流値で電線の太さを決定できます。
まとめ
電動機に電気を供給する電線を選ぶ際は、許容電流が非常に重要です。
電動機の種類(連続運転、短時間使用など)や定格電流によって、必要な電線の太さが異なります。
電動機の過負荷保護装置などの施設
1. 過負荷保護装置の必要性
電動機は、過負荷状態が続くと焼損する危険性があります。そのため、電動機用ヒューズ、電動機保護用配線用遮断器、熱動継電器(サーマルリレー)などの過負荷保護装置を設置することが義務付けられています。これらの装置は、過負荷を検知すると自動的に回路を遮断し、電動機を保護します。
2. 過負荷保護装置の設置が不要なケース
ただし、以下のいずれかに該当する場合は、過負荷保護装置の設置は不要です。
- 電動機自体に有効な過負荷焼損防止装置がある場合
- 電動機電線のインピーダンスが高く、始動不能時にも電動機を焼損するおそれがない場合(35W程度以下の交流電動機)
- 常時取扱者がいて運転する場合(一般工作機械用電動機、ホイストなど)
- 負荷の性質上、電動機が過負荷するおそれがない場合
- 単相の電動機で15A分岐回路(配線用遮断器にあっては、20A)から使用する場合
- 電動機の出力が0.2kW以下の場合
3. 欠相保護装置の必要性
電源の欠相は、電動機の機能に重大な支障をきたし、損傷の原因となります。そのため、欠相による焼損を防止するために、欠相保護装置の設置が義務付けられています。警報で支障がない場合は、警報装置でも可能です。
4. まとめ
- 電動機の焼損を防ぐためには、過負荷保護装置と欠相保護装置の設置が不可欠です。
- 過負荷保護装置には、電動機用ヒューズやサーマルリレーなどがあります。
- 特定の条件下では、これらの保護装置の設置が免除される場合があります。
- 欠相保護装置は電源の欠相から電動機を保護します。
電動機の幹線の太さ
1. 幹線の太さ選定の基本
電動機に電力を供給する幹線の太さは、以下の2つの重要な要素を考慮して決定する必要があります。
- 電圧降下: 電線の抵抗により電圧が低下し、電動機の性能に影響を与えないようにする必要があります。
- 許容電流: 電線が安全に流せる電流の上限を超えないようにする必要があります。
2. 電動機の定格電流に応じた選定
幹線の太さを決定する際には、接続される電動機の定格電流の合計に基づいて、以下の計算式を使用します。
- 定格電流の合計が50A以下の場合:
- 定格電流の合計の1.25倍以上の許容電流を持つ電線を選定します。
- 定格電流の合計が50Aを超える場合:
- 定格電流の合計の1.1倍以上の許容電流を持つ電線を選定します。
3. 定格電流の合計の算出
- 200V三相誘導電動機の場合、定格出力1kWあたり4Aとして定格電流を計算できます。
4. 需要率、力率の考慮
- 需要率や力率が明らかな場合は、これらの要素を考慮して、上記で計算した値を適切に修正できます。
まとめ
電動機に供給する幹線の太さを選定する際は、電圧降下と許容電流に加えて、電動機の定格電流の合計に基づいて電線を選定することが重要です。定格電流の合計が50A以下か超えるかによって計算式が異なる点、200V三相誘導電動機の定格電流の算出方法、需要率と力率の考慮といった点をおさえておくことで、安全で効率的な電力供給を実現できます。
電灯及び電力装置などを併用する幹線の太さ
1. 幹線の太さ選定の基本
幹線の太さを決める際は、以下の2つの重要な要素を考慮する必要があります。
- 電圧降下: 電気を送る際に、電圧がどれくらい下がるかを考慮します。電圧降下が大きすぎると、機器が正常に動作しなくなる可能性があります。
- 許容電流: 電線が安全に流せる最大の電流です。許容電流を超える電流を流すと、電線が発熱し、火災の原因となる可能性があります。
2. 許容電流の計算
幹線の各部分には、そこを通って電気を使う機器の定格電流(機器が通常時に使用する電流)の合計以上の許容電流を持つ電線を使用する必要があります。
電動機など、始動時に大きな電流が流れる機器がある場合は、特別な計算が必要です。
- 電動機の定格電流の合計が50A以下の場合は、その合計の1.25倍の電流値を考慮します。
- 電動機の定格電流の合計が50Aを超える場合は、その合計の1.1倍の電流値を考慮します。
3. 溶接機の取り扱い
溶接機を使用する場合は、通常の定格電流ではなく、平均的な電流値(速等電流値)を使用することができます。
4. 需要率と力率の考慮
実際の使用状況に合わせて、以下の要素を考慮することで、より適切な幹線の太さを選ぶことができます。
- 需要率: 全ての機器が同時に最大の電流を使用するわけではないため、実際の使用状況に合わせた係数を使用します。
- 力率: 交流回路において、電圧と電流の位相差を示す値です。力率が低いと、同じ電力を送るために、より大きな電流が必要になります。
まとめ
幹線の太さを選ぶ際は、安全かつ効率的に電気を供給するために、以下の点を総合的に考慮する必要があります。
- 電圧降下と許容電流の基準を満たすこと。
- 電動機など、始動電流が大きい機器の特性を考慮すること。
- 溶接機を使用する場合は、速等電流値を活用すること。
- 実際の使用状況に合わせて、需要率と力率を適切に考慮すること。
幹線の過電流保護
1. 低圧幹線保護のための設置
- 低圧幹線を保護するために、電源側に過電流遮断器を設置する必要があります。これは、電線が過電流によって損傷するのを防ぎ、電気火災などの事故を未然に防ぐために不可欠です。
2. 他の低圧幹線を接続する場合
- 低圧幹線から、より細い電線を使用する別の低圧幹線を分岐させる場合は、関連する規定に従って過電流遮断器を設置する必要があります。これは、分岐後の電線を適切に保護するために重要です。
3. 低圧屋内幹線を保護する過電流遮断器の選定
低圧屋内幹線を保護するために設置する過電流遮断器は、その幹線の許容電流以下の定格電流を持つものを選ぶ必要があります。ただし、電動機などが接続されている場合は、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 電動機などの定格電流の合計の3倍に、他の機器の定格電流の合計を加えた値以下であること。
- 上記の値が幹線の許容電流の2.5倍を超える場合は、許容電流の2.5倍以下であること。
- 幹線の許容電流が100Aを超える場合、上記の値が標準定格にないときは、直近上位の標準定格であること。
ただし書きの条件に当てはまる場合の許容電流の電線(電線管)は、がいし引き配線の値で計算できます。
幹線に取り付ける開閉器
電動機に電気を供給する幹線に取り付ける開閉器の定格電流は、3705-8(幹線の過電流保護)に規定する過電流遮断器の定格電流以上とする必要があります。
電動機回路の簡便設計
1. 一般的な三相誘導電動機(200V/400V)の場合
- エレベーター、エアコン、冷凍機などの特殊用途や、インバータ制御の電動機を除き、一般的な三相誘導電動機1台の分岐回路と幹線設計は、3705-1表から3705-4表に基づいて行います。
- これらの表は、力率改善用の進相コンデンサがない状態を前提としています。
- 3705-3表と3705-4表は、2015年4月以降のトップランナーモータのみの回路設計用です。既存の設備で新旧のモータが混在する場合は、別途資料を参照する必要があります。
- トップランナーモータ以外の電動機についても、別途資料を参照してください。
2. 特殊用途の電動機とインバータ制御の場合
- エレベーター、エアコン、冷凍機などの特殊用途や、インバータ制御の電動機は、3705-1(負荷の算定)2項に基づいて電流値を算出し、幹線・分岐回路の電線サイズと過電流遮断器の定格電流を決定します。
- 交流エレベーター:起動・加速時の電圧降下を考慮し、電線サイズを慎重に選定する必要があります。
- パッケージ形エアコン:製造元の技術資料を参照してください。
- ウォーターチリングユニット・冷凍機:冷却方式によって資料を参照してください。
- 開放形冷凍機:汎用モータ使用時は、3705-1表、3705-2表または資料を参照してください。
- インバータ制御:製造元の技術資料を参照してください。
まとめ
- 電動機の負荷算定は、電動機の種類や使用方法に応じて適切な方法を選択する必要があります。
- 汎用電動機の場合は、銘板に表示された定格電流を基準とします。
- 特殊な用途の電動機やインバータを使用する場合は、製造業者の技術資料を参照する必要があります。
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