この記事は連載「内線規程の解釈と解説」(全119回)の1本です。
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出典:内線規程(JEAC8001-2022)より

許容電流は、電線が安全に流せる最大の電流値です。電線選定の基本は「負荷電流 ≦ 補正後の許容電流」。押さえるポイントは 「許容電流とは/補正で決まる」 の2つです。

許容電流とは、安全に流せる最大電流 超えると発熱や火災のおそれ。
選ぶときは、負荷電流 ≦ 補正後 補正後の許容電流と比べます。
補正後の許容電流は、掛け算で求める 基準値×温度補正×電流減少係数。
本数が多いほど、係数は小さくなる 同一管内の電線数で決まります。
ペン太ペン太
許容電流って、電線の太さだけで決まらないんですか?
ハリタハリタ
太さは基本だけど、それだけじゃない。同じ電線でも、管にまとめた本数や周囲温度で「流せる量」は変わるんだ。だから基準値に補正をかけて、負荷電流より大きいかを確かめるんだよ。
この記事でわかること
✔ ① 許容電流とは(選定の考え方)
✔ ② 補正後の許容電流を計算してみよう

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ペン太ペン太
電線の許容電流って、サイズさえ決まればカタログの基準値をそのまま使えますよね?
ハリタハリタ
補正が要ります。基準値に温度補正係数と電流減少係数を掛けた補正後の許容電流を、負荷電流と比べるんですよ。

この記事で押さえる3つのこと

  • 許容電流を超える電流が流れ続けると、発熱・絶縁破壊・火災のおそれがある。
  • 補正後の許容電流は、基準の許容電流 × 温度補正 × 電流減少係数で求める。
  • 足りないときは、電線を太くする・配管を分ける・周囲温度の低い経路にする。
この記事の道案内
内線規程(JEAC8001-2022)にそって、許容電流の考え方を3つの視点で整理します。

① 許容電流とは(選定の考え方)

許容電流とは、安全に流せる最大電流 これ以下なら、安全に使えます。
超えて流し続けると、電線が発熱する 電流が大きいほど、発熱も大きくなります。
絶縁が壊れると、火災のおそれ 熱で絶縁が傷み、火災の原因になります。
だから、許容電流以下で使う 超えないサイズを選びます。
基準値は、そのままでは使えない 表やカタログの値です。
まず、温度補正を掛ける 周囲30℃なら1.00。暑いと小さくなります。
次に、電流減少係数を掛ける 例:3本以下なら0.70。100Aが70Aになります。
補正後の値と比べる 例:70Aでは80Aに足りない。
  • 許容電流=電線が安全に流せる最大の電流値(超えると発熱・絶縁破壊・火災のおそれ)
  • 選定の基本:負荷電流 ≦ 補正後の許容電流
  • 補正後の許容電流=基準の許容電流 × 温度補正 × 電流減少係数(電線の特性・周囲温度・同一管内の本数で決まる)
ペン太ペン太
同じ管に61本以上入れると係数0.34⁉ 半分以下しか流せないんですか?
ハリタハリタ
まとめるほど放熱性が下がるからです。3本以下でも0.70。だから配管本数を減らす対策が効くんですよ。
同一管内の電線数 電流減少係数
3本以下 0.70
4本 0.63
5〜6本 0.56
7〜15本 0.49
16〜40本 0.43
41〜60本 0.39
61本以上 0.34
たとえるなら
許容電流は、人が運べる荷物の重さの上限のようなもの
涼しい場所なら、人は重い荷物を運べます。でも、暑い日や人混みの中では、運べる量は減ります。電線も同じで、基準の許容電流は、周囲温度30℃などの標準の条件での値です。周囲が暑かったり、同じ管に電線が多かったりすると、流せる電流は減ります。だから電線を選ぶときは、減ったあとの「補正後の許容電流」で、負荷電流と比べます。
ひっかけ注意
「許容電流は、電線の太さだけで決まる」ではありません。
太さ(断面積)は、許容電流を決める基本です。でも、実際に流せる電流は、周囲温度や、同じ管に入れる電線の本数でも変わります。太さだけを見て選ぶと、足りなくなることがあります。
ここまでのポイント
  • 許容電流は、電線が安全に流せる最大の電流値(超えると発熱・絶縁破壊・火災のおそれ)。
  • 選定の基本は、負荷電流 ≦ 補正後の許容電流。
  • 補正後の許容電流 = 基準の許容電流 × 温度補正 × 電流減少係数。
  • 電線の特性・周囲温度・同一管内の本数で決まる。


② 補正後の許容電流を計算してみよう

同じ管に電線が増えると、熱がこもる 放熱しにくくなります。
電流減少係数は、本数で決まる 段階的に下がります。
本数が増えるほど、係数は小さくなる 流せる電流は減ります。
61本以上は、0.34 0.70の、およそ半分です。

同一管内の電線数(電流減少係数)と温度補正をかけて、選んだ電線が負荷に足りるかをチェックできます。

🧮 補正後の許容電流 かんたんチェック

基準の許容電流に「電流減少係数」と「温度補正」をかけ、負荷電流と比べます。

基準の許容電流(A):

同一管内の電線数:

温度補正係数(周囲温度30℃なら1.00):

流したい負荷電流(A):

補正後の許容電流:–

※ 電流減少係数は内線規程1340-3表の一例です。概算用のため、実設計では最新版の表で確認してください。

ここがポイント|「基準値 × 補正」で判断
許容電流は 基準の許容電流 × 温度補正 × 電流減少係数で評価。同一管内の本数が多いほど係数は小さく(3本以下0.70〜61本以上0.34)。最終的に 負荷電流 ≦ 補正後の許容電流を満たすサイズを選びます。
許容電流が足りないときの対策 考え方
電線を太くする(断面積を上げる) 基準の許容電流そのものを大きくする
本数を減らして配管を分ける 電流減少係数を大きくする
周囲温度の低い経路にする 温度補正係数を大きくする
電線を太くする 基準の許容電流が、大きくなります。
配管を分けて、本数を減らす 電流減少係数が、大きくなります。
周囲温度の低い経路にする 温度補正係数が、大きくなります。
どれも、補正後の値を上げる 負荷電流以上になるまで、見直します。
たとえるなら
同じ管に電線を詰めるのは、満員電車のようなもの
電車が空いていれば、人は動きやすく、熱もこもりません。満員になると、動けず、熱がこもって暑くなります。電線も同じで、同じ管に入る本数が増えるほど、熱が逃げにくくなります。だから流せる電流が減り、電流減少係数は小さくなります。
ひっかけ注意
「負荷電流と比べるのは、表の許容電流(基準値)」ではありません。
比べるのは、基準の許容電流に温度補正と電流減少係数を掛けた「補正後の許容電流」です。基準値のまま比べると、足りているように見えても、実際は足りないことがあります。
ここまでのポイント
  • 同一管内の電線数(電流減少係数)と温度補正をかけて、選んだ電線が負荷に足りるかを確認する。
  • 電流減少係数は、3本以下0.70から61本以上0.34まで段階的に下がる。
  • まとめるほど放熱性が下がるため、配管本数を減らす対策が効く。


よくある質問(FAQ)

Q. 許容電流ってそもそも何?

A. 電線が安全に流せる最大の電流値のことです。これを超える電流が流れ続けると、電線が発熱して絶縁が傷んだり火災の原因になります。だから「負荷電流 ≦ 許容電流」になるサイズを選びます。

Q. 電流減少係数(補正係数)はなぜ必要なの?

A. 1本の管に複数の電線をまとめると放熱が悪くなり、流せる電流が下がるためです。同一管内の電線数が多いほど係数は小さくなり、3本以下0.70から61本以上0.34まで段階的に下がります(内線規程の一例)。

Q. 許容電流が負荷電流に足りないときは?

A. 電線を太くする(断面積を上げる)、本数を減らして配管を分ける、周囲温度の低い経路にするなどで補正後の許容電流を上げます。基準の許容電流に温度・本数の補正をかけた値が負荷電流以上になるよう選定します。

まとめ|基準値ではなく「補正後」で比べる

許容電流の選定は、基準の許容電流に温度補正と電流減少係数を掛けた値が、負荷電流以上になっているかで判断します。

確認する項目 内容
許容電流とは 電線が安全に流せる最大の電流値
超えたときのリスク 発熱・絶縁破壊・火災のおそれ
選定の基本式 負荷電流 ≦ 補正後の許容電流
補正後の許容電流 基準の許容電流 × 温度補正 × 電流減少係数
係数を決める要素 電線の特性・周囲温度・同一管内の本数
電流減少係数が下がる理由 管にまとめるほど放熱性が下がるため
係数の範囲 3本以下0.70から61本以上0.34まで
足りないときの対策 電線を太くする/本数を減らして配管を分ける/周囲温度の低い経路にする

考え方で押さえること

  • 許容電流の定義と超えたときのリスク。
  • 負荷電流と比べるのは補正後の値であること。
  • 補正に使う2つの係数。

係数で押さえること

  • 同一管内の電線数による段階的な低下。
  • 放熱性が理由であること。
  • 温度補正は、周囲温度30℃のとき1.00であること。

足りないときに押さえること

  • 電線サイズを上げる。
  • 配管を分けて本数を減らす。
  • 経路の周囲温度。

許容電流は表の数値をそのまま使いがちですが、実際の現場では同一管内の本数で大きく目減りします。配管計画と電線サイズはセットで検討すると、あとからの手戻りを避けられます。

ペン太ペン太
補正後でも許容電流が足りないときは、どうすればいいですか?
ハリタハリタ
電線を太くする、配管の電線本数を減らす、周囲温度の低い経路を選ぶ。この3つで見直せば大丈夫ですよ。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。