出典(内線規程(JEAC8001-2022))より
支持物の倒壊の防止
架空電線路や架空電車線路の支持物(電柱や鉄塔など)は、電気の安全な供給に不可欠な設備です。これらの支持物が倒壊すると、停電や感電事故など、重大な事故につながる可能性があります。そのため、支持物の倒壊を防止することは、電気設備の安全性を確保する上で非常に重要です。
支持物の倒壊防止のための主なポイント
荷重と外部環境への対策:
電線による引っ張り荷重
風速40m/sの風圧荷重
気温や振動、衝撃など、通常の環境変化
これらの荷重や外部環境の影響を考慮し、倒壊の恐れがない安全な材料と構造で支持物を作る必要があります。
人家連担地域での配慮:
人家が密集している地域では、風圧荷重を半分に軽減して設計できます。これは、建物が風の影響を軽減するためです。
特別高圧架空電線路の安全性:
特に高い電圧の電線路では、支持物が連鎖的に倒壊しないような構造にする必要があります。これは、広範囲にわたる停電を防ぐためです。
架空電線路
1. 支持物の設置に関する規制
原則:
架空電線路の支持物(電柱など)は、他人が設置した電線路(電力線、通信線、光ファイバケーブル線路)を貫通して設置してはいけません。
これは、安全性を確保し、他人の電線路への影響を避けるための規制です。
例外:
ただし、他人の承諾を得た場合は、この限りではありません。
2. 架空電線の設置に関する規制
原則:
架空電線は、他人が設置した電線路(電力線、電車線、通信線、光ファイバケーブル線路)の支持物を挟んで設置してはいけません。
これも、安全性を確保し、他人の電線路への影響を避けるための規制です。
例外:
同一の支持物に設置する場合、または他人の承諾を得た場合は、この限りではありません。
架空電線の支持
支持方法: 架空電線(ケーブルを除く)を支持物に取り付ける場合は、電圧に応じてがいしなどの絶縁材を使用して支持する必要があります。
架空電線の分岐
分岐方法: 架空電線の分岐は、分岐点において電線に張力が加わらないように施設する場合を除き、電線の支持点で行う必要があります。
低高圧保安工事
保安工事の必要性
架空電線(電柱などに架けられた電線)は、安全性を確保するために、一定の条件下で「保安工事」という特別な工事を行う必要があります。これは、電線が他の構造物と接近または交差する場合に、感電や火災などの事故を防ぐための措置です。
1. 低圧架空電線の場合
- 低圧架空電線が、高圧架空電線や高圧電車線と接近または交差する場合、低圧保安工事が必要です。
- 低圧とは、一般家庭に供給される100Vや200Vなどの電圧のことです。
- 高圧は、それよりも高い電圧のことで、工場やビルなどに供給されます。
2. 高圧架空電線の場合
- 高圧架空電線が、以下のいずれかと接近または交差する場合、高圧保安工事が必要です。
- 建造物(住宅、ビルなど)
- 道路
- 鉄道
- 低圧電車線
- 架空弱電流電線(電話線、通信線など)
- 架空光ファイバケーブル線路
- アンテナ
- 低圧架空電線
- 他の高圧架空電線
- 高圧電車線
- その他の工作物
3. 交流電車線の場合
- 交流電車線(電車に電気を供給する電線)と接近または交差する場合は、電気設備に関する技術基準を解釈した法律によって施設する必要があります。
接近状態の説明
接近状態の定義
- 架空電線が他の工作物の上方または側方に、水平距離で「架空電線路の支持物の地表上の高さ」以内の範囲に設置された状態。
- この範囲内では、電線が切れたり、電柱が倒れたりした場合に、電線が他の工作物に接触する危険性があります。
- 接近状態は、電線の交差や同一支持物への設置は含みません。
保安工事の省略
保安工事が省略可能なケース
以下の3つのケースでは、保安工事が省略可能です。
屋側・屋内電線路に隣接する短い架空電線:
屋側電線路(建物の壁などに沿って設置された電線路)または屋内電線路(建物内に設置された電線路)に隣接する、ごく短い区間の架空電線が、建物と非常に近い状態で設置されている場合。
この場合、万が一電線が切断しても、建物に接触する可能性が低いため、保安工事を省略できます。
B種接地工事済みの低圧架空電線路に接近する架空電線:
架空電線路の一部にB種接地工事(高圧または特別高圧の電気設備における接地工事)が施された低圧架空電線路と、他の架空電線が接近した状態で設置されている場合。
B種接地工事により、万が一の漏電時にも安全が確保されるため、保安工事を省略できます。
危険性が低い場所の架空電線:
架空電線路の電線が切断したり、支持物(電柱など)が倒壊したりしても、架空電線が他の工作物(建物、道路など)と接触する可能性が低く、人に危険を及ぼすおそれがない場合。
例えば、人や車両がほとんど通らない山間部などに設置された架空電線路が該当します。
支持物の昇柱防止
原則:
足場金具などは、安全確保のため地表から1.8m以上の高さに設置。
例外:
特定の条件に該当する場合は、上記の原則は適用されません。
具体的な例外条件は資料には記載されていません。
安全確保の重要性:
足場金具の設置は、作業員の安全に直接関わるため、法令や基準を遵守することが重要です。
支持物の昇柱防止(例外規定)
足場金具の設置高さに関する例外
通常、電柱などに設置する足場金具は、安全のために地面から1.8m以上の高さに設置する必要があります。しかし、以下のいずれかに該当する場合は、例外として1.8m未満の高さに設置することが可能です。
- 内部格納型の場合:
- 足場金具が使用しない時に内部に収納できる構造になっている場合。
- 昇柱防止装置の設置:
- 電柱への昇りを防ぐための装置(例:昇柱防止板)が設置されている場合。
- 立ち入り制限措置:
- 足場金具の周囲に柵や塀などを設け、電気工事関係者以外の人が立ち入れないようにしている場合。
- 立ち入り困難な場所:
- 山奥など、一般の人が容易に立ち入れない場所に足場金具が設置されている場合。
例外が認められる理由
これらの例外は、足場金具が低い位置にあっても、一般の人が容易に触れることがなく、安全が確保される場合に認められます。
支持物の強度
支持物の種類と強度基準
木柱:
- 末口(先端)の太さによって基準が異なります。
- 高圧電線用:直径12cm以上
- 低圧電線用(保安工事):直径12cm以上
- 低圧電線用(保安工事以外):直径10cm以上が望ましい
- 木柱全体の強度基準は、配電規程第205節(支持物)に定められています。
鉄柱、鉄筋コンクリート柱、鉄塔:
- これらの支持物の強度基準も、配電規程第205節(支持物)に定められています。
工場打ち鉄筋コンクリート柱:
- 強度早見表が資料2-2-1に掲載されています。
支持物基礎の強度
基本的な根入れ基準からの例外
通常、配電柱の根入れ深さは、電柱の種類や全長、設計荷重などに基づいて定められた基準に従って施工されます。しかし、以下のような特定の条件に該当する場合は、例外として基準によらない根入れが認められています。
例外が適用される条件
鋼板組立柱または鋼管柱:
- 全長が16m以下
- 設計荷重が6.87kN以下
木柱:
- 上記条件にかかわらず、木柱全般
- これらの条件に該当する場合、根入れ深さは「2200-1表」に基づいて施工されます。
注意点
軟弱地盤:
- 地盤が軟弱な場所では、上記の例外規定が適用される場合でも、別途、堅牢な根かせを施す必要があります。これは、軟弱な地盤では電柱が傾いたり倒れたりする危険性があるため、それを防ぐための措置です。
詳細な規定:
- 根入れ深さおよび根入れの長さに関する詳細な規定は、配電規程第205節(支持物)に記載されています。
2200-1表 A種鉄柱又は木柱の根入れ
全長区分別根入れ:
- 15m以下:全長の1/6以上
- 15mを超えるもの:2.5m以上
支線、支柱の使用
1. 支線の役割と必要性
- 架空電線路の電柱は、電線の張力や風圧など、様々な外力を受けます。特に、電線路の角度が変わる箇所や、電線を引き留める箇所では、電柱に大きな負荷がかかります。
- 支線は、これらの外力によって電柱が倒壊するのを防ぐための重要な安全対策です。
2. 高圧架空電線路における支線設置の条件
- 電線路の水平角度が5度を超える箇所:電線の張力によって生じる水平方向の力に耐える支線を設置する必要があります。
- 電線路で全ての電線を引き留める箇所:電線の最大張力による水平方向の力に耐える支線を、電線路と平行な方向に設置する必要があります。
3. 低圧架空電線路における支線設置の推奨
- 低圧架空電線路の電柱についても、高圧架空電線路の規定に準じて支線を設置することが推奨されます。これにより、より安全な電線路を構築できます。
4. 支線の代替手段:支柱
- 支線と同等以上の効果を持つ支柱を使用することで、支線の代替とすることができます。
使用電圧による制限
DV電線等の使用制限: 使用電圧が300Vを超える低圧架空電線には、DV電線、DE電線又は多心型電線を使用しないこと。
多心型電線の使用条件
多心型電線の接地: 使用電圧が300V以下の低圧架空電線に多心型電線を使用する場合、絶縁物で被覆していない導体は、B種接地工事を施した中性線若しくは接地側電線又はD種接地工事を施したメッセンジャーワイヤ用として使用する必要があります。
架空電線の線間距離
1. 線間距離の基本ルール
- 架空電線において、同じ回線の電線同士の距離は、電線が最もたるんだ地点で「2200-4表」という基準に従って設置する必要があります。
- この表には、電線の種類に応じた水平距離と垂直距離の具体的な数値が記載されています。
2. 例外となるケース
ただし、以下の場合は上記の基準が適用されません。
- ラインスペーサの使用:
- 電線間にラインスペーサという器具を使用することで、電線同士の距離を保つことができます。
- 絶縁電線の使用:
- 低圧電線に高圧絶縁電線または特別高圧絶縁電線を使用する場合、絶縁性能により距離を縮小できます。
- 混触の危険がない場合:
- ジャンパー線や引き下げ線など、他の電線と接触する危険がない場合は、距離の基準が緩和されます。
- 電柱の角や分岐部分の縁廻し線など、同様に混触の危険がない場合も例外となります。
- 特定の電線を使用する場合:
- 低圧電線にDV電線、DE電線、多心型電線などの特殊な電線を使用する場合も基準が緩和されます。
3. 2200-4表について
- この表は、架空電線の線間距離を定める重要な基準です。
- 径間(電柱間の距離)が60m以下の場合の線間距離が規定されています。
- 電線の種類に応じて、必要な水平距離と垂直距離が細かく定められています
DV電線又はDE電線を使用する構内電線路の施設
1. 電線の支持
- がいしによる支持:
- 各電線は、それぞれ異なるがいしの溝に入れ、異なるバインド線で固定します。
- 電線同士やバインド線同士が直接接触しないように注意してください。
- 3心のDV電線またはDE電線を使用する場合は、1線のバインドを省略できます。
- バインドレスがいしの使用:
- バインドレスがいしを使用する場合は、バインド作業自体を省略できます。
2. 電線の接続
- 接続箇所のズラし:
- 電線同士を接続する際は、各線の接続箇所を5cm以上ずらして接続します。
- 各線の長さを均一に保つように接続してください。
3. メッセンジャーワイヤによるちょう架
- 規定の準用:
- DV電線またはDE電線をメッセンジャーワイヤでちょう架する場合は、「2200-23」の規定を準用して施設します。
架空電線の弛度
弛度の基準: 高圧架空電線は、電線の強さの安全率が硬鋼線では2.2以上、その他の電線では2.5以上となるような弛度で施設する必要があります。
弛度の詳細は、配電規程第215節を参照してください。
電線に対する風圧荷重の詳細は、配電規程第200節を参照してください。
架空電線が他物と接近する場合の離隔距離
離隔距離の基準: 架空電線が他物(他の工作物及び植物)と接近状態に施設される場合の最小離隔距離は、2200-5表によります。
架空電線が他物の上部で交差する場合の離隔距離
離隔距離の基準: 架空電線が他物(他の工作物、田畑、水面及び植物)の上部で交差する場合の最小離隔距離は、2200-6表によります。