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内線規程の解説 PR

内線規程の解釈と解説【098】|小勢力回路の施設

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出典(内線規程(JEAC8001-2022))より

小勢力回路の施設基準と安全対策について

はじめに

見習いペン太
見習いペン太
小勢力回路って何のことですか?普通の電気回路と何が違うんでしょうか?

はりた
はりた
いい質問だね!小勢力回路は安全性を重視した低電圧の回路のことなんだ。今日は詳しく解説していくよ!

電気工事において、安全性の確保は最も重要な要素の一つです。特に小勢力回路は、人体への危険性を最小限に抑えるために設計された特別な回路システムです。本記事では、小勢力回路の基本概念から施設基準、安全対策まで、電気工事士が知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。

小勢力回路とは?基本的な定義と特徴

小勢力回路とは、電気を使用する機器の中でも、比較的消費電力が小さく、人体への危険性が低い機器に使用される回路のことを指します。この回路は、感電事故のリスクを大幅に軽減するため、特別な安全基準が設けられています。

対地電圧の規定

小勢力回路に電気を供給する絶縁変圧器の対地電圧は、300V以下に制限されています。この制限により、万が一の事故の際も人体への影響を最小限に抑えることができます。

電源装置の施設基準

小勢力回路と絶縁変圧器の関係

小勢力回路では、感電などのリスクを低減するため、専用の絶縁変圧器から電力を供給する必要があります。この絶縁変圧器は、一次側と二次側を電気的に分離することで、安全性を確保しています。

絶縁変圧器の適合条件

絶縁変圧器は以下の条件を満たす必要があります:

二次短絡電流の規定値

  • 最大使用電圧15V以下:8A以下
  • 最大使用電圧30V以下:5A以下
  • 最大使用電圧60V以下:3A以下

ただし、二次側に規定値以下の過電流遮断器を設置する場合は、この限りではありません。

過電流遮断器の設置基準

過電流遮断器を設置する場合の最大定格は以下の通りです:

  • 最大使用電圧15V以下:5A
  • 最大使用電圧30V以下:3A
  • 最大使用電圧60V以下:1.5A

過電流遮断器の取り付け器具には、異なる定格の過電流遮断器を取り付けることを防止するため、過電流遮断器の定格を明示しておく必要があります。

見習いペン太
見習いペン太
電圧によって電流の制限が厳しくなるんですね。これは安全のためですか?

はりた
はりた
その通り!電圧が高くなるほど危険度が増すから、電流をより厳しく制限しているんだ。これが小勢力回路の安全設計の基本だよ。

絶縁変圧器の施設要件

過電流遮断器の設置

変圧器の一次側には、専用の過電流遮断器を設置する必要があります。ただし、15Aまたは20Aの分岐回路(動力回路を含む)に接続する場合は、この限りではありません。

開閉器などの設置

変圧器の一次側には、変圧器の近くに開閉器、カットアウトスイッチ、または適切な接続器を取り付け、電源側から容易に分離できるようにする必要があります。

変圧器の取り付け位置と場所

  • 取り付け位置:専用の分岐回路に接続する場合や、技術上やむを得ない場合を除き、配電盤または分電盤に近い位置に取り付ける
  • 取り付け場所:耐火性物質の箱内に収める場合を除き、露出した場所に取り付ける

箱を使用する場合は、十分な容積があり、内部の点検が容易な構造である必要があります。

小勢力回路の配線基準

基本的な配線原則

小勢力回路の電線は、湿気の多い場所や水気のある場所を除き、以下の規定に従って施設する必要があります。

電線の保護対策

外部損傷の防止

  • 外部からの損傷が懸念される電線は、金属管や合成樹脂管などに収めて保護
  • 造営材を貫通する部分は、電線管や線ぴに収める場合を除き、がい管に収めるかテープで保護

ただし、使用電圧が30V以下の場合は例外となります。

特殊な施設環境での配線

地中施設の配線基準

埋設深度と防護措置

  • 通常:30cm以上の深さに埋設
  • 車両など重量物の圧力がかかる場所:1.2m以上の深さに埋設
  • 防護措置:鋼帯がい装ケーブル等を除き、電線の上部を丈夫な板やといで覆う

架空施設の配線基準

電線の種類と太さ

  • 基本:引張強さ508N以上、または直径1.2mm以上の硬鋼線を使用
  • 例外条件:引張強さ2.36kN以上の金属線、または直径3.2mm以上の亜鉛めっき鉄線のメッセンジャーワイヤでちょう架する場合

電線の高さ規定

  • 道路横断:地表上6m以上
  • 鉄道・軌道横断:レール面上5.5m以上
  • 上記以外:地表上4m以上(危険のおそれがない場合は地表上2.5mまで減じることが可能)

離隔距離

  • 電線と弱電流電線、光ファイバーケーブル、または他の工作物との離隔距離:30cm以上
  • 裸電線と植物との離隔距離:30cm以上

湿気の多い場所・水気のある場所での対策

設置場所に応じた防水・防湿対策

ベル、表示器、押しボタンなどは、設置場所の環境(雨水、湿気など)に応じて、適切な防水・防湿構造のものを選ぶ必要があります。JIS規格(防湿形、防雨形、防まつ形、防浸形)を参考に、設置場所に最適な製品を選定してください。

浴室内に設置する装置の安全対策

浴室のように水気や湿気が多い場所に、人が直接操作する装置(押しボタンなど)を設置する場合は、特に安全に配慮する必要があります:

  • 絶縁変圧器を使用し、二次側電路の使用電圧を24V以下にする
  • 内部に湿気や水が入らない構造の製品を選ぶ
  • 操作部と充電部を二重に絶縁する
  • 浴槽に水没しない場所に設置する

見習いペン太
見習いペン太
浴室での工事は特に注意が必要そうですね。24V以下というのがポイントでしょうか?

はりた
はりた
まさにその通り!水と電気は特に危険な組み合わせだから、電圧を下げて二重絶縁にするなど、何重もの安全対策が必要なんだ。

リモコン配線の施設要件

リモコン配線用操作用電源変圧器

リモコン配線用の操作用電源変圧器は、二次電圧24V以下のリモコン変圧器を使用するか、または規定する変圧器(二次電圧V以下のものに限る)を使用し、規定に準じて施設する必要があります。

リモコンリレーの施設基準

基本原則:接触防護と外傷防止

  • 接触防護措置:リレーの露出部分を絶縁物で覆う、またはキャビネットやボックス内に収納
  • 外傷防止:外部からの衝撃で損傷しないよう、キャビネットやボックス内に収納または造営材にしっかりと固定
  • 点検・交換の容易性:定期的な点検や交換のため、容易にアクセスできる場所に設置

特殊場所における施設要件

特殊場所で使用するリモコンリレー・リモコンスイッチの条件

特殊場所 条件
ガス蒸気危険場所、粉じん危険場所、火薬類の製造所など 防爆構造のものを使用
腐食性ガスなどのある場所、不燃性じんあいの多い場所 防じん構造のものを使用
危険物などの存在する場所 地上0.5m以上:条件なし<br>地上0.5m未満:防爆構造
湿気の多い場所又は水気のある場所 施設場所に応じ、雨水などの浸入を防止する構造

操作回路の配線における特別な要件

土壁・しっくい壁などへの埋込み

  • 電線を土壁、しっくい壁、しっくい天井などに埋込む場合は、管又は線ぴに収める
  • 例外:電話用ビニル電線又は電話用編組ゴム電線若しくはこれらと同等以上の絶縁効力のある被覆線を使用する場合は、直接埋込み可能

コンクリートへの埋込み

  • コンクリートに埋込む場合は、電線管などに収める
  • 例外:仕上げ塗りの部分に埋込む場合は、上記のただし書きによって施設可能

非常警報器用共同配線の特別な要件

基本的な施設方針

非常警報器用共同配線は、小勢力回路の規定に準じて施設するほか、以下の特別な要件があります。

操作回路と警報回路の分離

  • 操作回路と警報回路に分け、操作回路は小勢力回路により施設
  • 警報回路のみを電灯配線から供給するように施設することが可能

サイレン及び警報ベルの防雨対策

雨線外に施設するサイレン及び警報ベルには、施設場所に応じ、雨水などの浸入を防止する構造のものを使用する必要があります。

まとめ

見習いペン太
見習いペン太
小勢力回路って、こんなに細かい規定があるんですね。覚えることがたくさんありそうです。

はりた
はりた
確かに規定は多いけど、すべては安全のためなんだ。基本的な考え方を理解すれば、応用もきくようになるよ。何より人の命を守る大切な工事だからね!

小勢力回路の施設基準と安全対策は、電気工事における重要な分野です。低電圧であっても、適切な施工を行わなければ安全性は確保できません。

重要なポイントをまとめると:

  1. 電圧制限:対地電圧300V以下、浴室等では24V以下
  2. 絶縁変圧器:専用の絶縁変圧器による安全な電力供給
  3. 配線保護:適切な電線管や防護装置による配線の保護
  4. 環境対応:湿気や水気、特殊環境に応じた適切な機器選定
  5. 定期点検:容易な点検・交換を考慮した設置

これらの基準を遵守することで、安全で信頼性の高い小勢力回路システムを構築することができます。電気工事士として、常に安全を最優先に考え、適切な施工を心がけましょう。

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