内線規程の解説 PR

内線規程の解釈と解説【067】|低圧電動機

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

出典(内線規程(JEAC8001-2022))より

記事のテーマ

低圧電動機設置における電気工事の安全性を確保するための位置・始動装置の施設ルールについて解説する。

低圧電動機とは?

低圧電動機とは、低電圧の電源で使用される電動機のことです。

電動機の位置に関するルール

  1. 保守点検が容易な位置に施設

    • 電動機は、軸受の給油、スリップリングの点検、ブラシの取り替えなどの保守点検が容易にできるように施設する必要があります。
    • ただし、水中電動機その他やむを得ないものは、この限りではありません。
  2. 火花を発する電動機の設置場所

    • 整流子又はスリップリングを有する開放形の電動機で火花を発するおそれがあるものは、火花が付近の易燃性の物に達しないような場所に設置する必要があります。
    • ただし、遮へい装置を取り付ける場合は、この限りではありません。

三相誘導電動機の始動装置に関するルール

三相誘導電動機の始動装置に関する説明

出力3.7kWを超える三相誘導電動機は、始動時の過大な電流を抑えるため、原則として始動装置が必要です。

ただし、以下の場合は始動装置の使用が例外的に認められます。

特殊かご形電動機: 定格出力が11kW未満のもの、または11kW以上であっても配線に大きな電圧変動を与えないもの。

大口需要: 契約電力が80kW以上の場所で、電動機の出力が契約電力の1/10以下の場合。

技術的困難: 始動装置の設置が技術的に難しい場合に、他の設備に悪影響がないよう配慮して設置する場合。

スターデルタ始動器使用時の配線

スターデルタ始動器を使用する際、始動器と電動機間の配線には、電動機分岐回路の配線許容電流の60%以上の能力を持つ電線を使用する必要があります。これは、スターデルタ始動時には配線に流れる電流が線電流の1/√3に減少するためです。

三相誘導電動機の始動装置に関する補足事項

ポンプ用電動機など自動運転を行う電動機に使用される電磁式スターデルタ始動装置は、電動機使用停止中には電動機巻線に電圧を加えないような措置を講じるものとする必要があります。

単相電動機の始動電流に関するルール

37A以下が原則

電灯と併用する単相誘導電動機で一般用電気工作物として施設されるものの始動電流は、電気事業者と協議した場合を除き、37A以下とする必要があります。

ただし、ルームエアコンディショナに限り、100V用では45A、200V用では60A以下とすることができます。

契約電力との関係

契約電力が十分大きい需要家又は専用変圧器を設置する需要家では、上記限度を超える電動機を支障なく使えることが多いです。

この場合、電動機1台の出力(2台以上同時に始動する場合は、その合計出力)は、契約電力(kW)又は変圧器の出力(kVA)の1/10を超えないようにするのが望ましいです。

 

巻線形電動機の二次側回路に関するルール

電線の太さ

巻線形交流電動機の二次側の制御器に接続する電線の太さは、以下のいずれかによって施設する必要があります。

① 連続使用のものは、二次側定格全負荷電流の1.25倍以上の許容電流をもつものであること。

② 連続使用以外のものは、その使用方法に応じて、二次側定格全負荷電流によらずに、配線の温度上昇を許容値以下とする熱的に等価な電流値により決めることができます。

制御器と抵抗器間の電線

二次側の抵抗器が制御器から離れている場合において、制御器と抵抗器との間を結ぶ電線の太さは、二次側定格全負荷電流の1.1倍以上の許容電流をもつものである必要があります。

ただし、連続使用以外のものでは、使用頻度に応じ適宜減じることができます。

 

可搬電動機に附属する移動電線に関するルール

電線の選定

可搬電動機に附属する移動電線は、用途に応じて断面積0.75mm²以上のコード又はキャブタイヤケーブルを3305-1表により選定する必要があります。

 

水中電動機の施設ルール

水中電動機の電線選定と設置に関する説明

水中電動機に接続する電線には、原則として一種キャブタイヤケーブル以外のキャブタイヤケーブルを使用する必要があります。

キャブタイヤケーブルの取り付け

キャブタイヤケーブルを揚水管に取り付ける際は、ケーブルの被覆を傷つけないように注意し、以下の方法に従います。

  • 金属製揚水管: 取付金具を使用し、支持点間の距離は電線の太さによって6m以下または3m以下とします。
  • ビニル管製揚水管: 粘着テープまたはひも類で1.5m以下の間隔で取り付けます。

水中部分の接続禁止

キャブタイヤケーブルは、水中部分での接続は原則として禁止されています。ただし、工場などの信頼できる方法で接続されたものは例外です。

ケーブル太さの選定

キャブタイヤケーブルの太さは、電動機用分岐回路の電線太さに関する規定に従って選定します。

焼損防止装置

水中電動機を使用する際は、焼損を防ぐために過負荷保護装置または温度検出による焼損防止装置の設置が必須です。

接地工事

水中電動機の接地工事は、接地に関する規定に基づいて行う必要があります。ただし、絶縁性の高い揚水管を使用し、人が触れる恐れのない状態で設置する場合は、接地を省略できることがあります。

トロリー線とは?

トロリー線とは、クレーンやホイストなどの移動式機械に電力を供給するための接触電線です。

トロリー線の施設ルール

施設方法

トロリー線を屋内に施設する場合は、がいし引き配線、バスダクト配線、又は絶縁トロリー配線により施設する必要があります。

屋内に施設する場合は、露出場所又は点検できる隠ぺい場所以外の場所には施設してはいけません。

がいし引き配線による施設

トロリー線をがいし引き配線により屋内の露出場所に施設する場合は、以下の要件を満たす必要があります。

① 床面からの高さは3.5m以上とし、人が通る場所から手が届かない範囲に施設する必要があります。

ただし、使用電圧が60V以下で乾燥した場所に施設し、簡易接触防護措置を施す場合は、この限りではありません。

② トロリー線と建物や走行クレーンに設ける歩道などが接近する場合は、離隔距離を確保するか、防護装置を設ける必要があります。

③ トロリー線は、引張強さ11.2kN以上又は直径6mmの硬銅線で断面積28mm²以上のものを使用する必要があります。

ただし、使用電圧が300V以下の場合は、引張強さ3.44kN以上又は直径3.2mmの硬銅線で断面積8mm²以上のものを使用することができます。

④ トロリー線の支持点間の距離及びトロリー線相互の間隔は、規定の表に従う必要があります。

支持点間距離と相互間隔の目安

トロリー線の支持点間の距離と相互の間隔は、以下の表を目安に施設する必要があります。

支持点間の距離 (m) トロリー線相互の間隔 (cm)
水平配列 水平でない配列
6以下 14以上*
12以下 28以上*

*印の付いているものは、トロリー線相互の間、及び集電装置(コレクタ)の充電部分と反対の極性の電線との間に、堅ろうな絶縁性の隔壁を設ける場合は、トロリー線相互の間隔を減少してもよいです。

トロリー線相互の間隔を狭める場合の条件

3305-4表による施設が困難な場合

トロリー線相互の間隔が3305-4表により施設し難いときは、3305-5表により施設する必要があります。

使用電圧が150V以下の場合

使用電圧が150V以下のトロリー線を50cm以下の間隔で支持し、かつ、揺動しないように施設する必要があります。

また、60A以下の過電流遮断器で保護するときは、その間隔を3cm以上とすることができます。

支持点間距離と相互間隔の目安(その2)

前回の記事では、トロリー線相互の間隔が3305-4表により施設し難い場合の施設方法について解説しました。今回は、3305-5表に基づいて、支持点間距離とトロリー線相互の間隔の目安を解説します。

電線の断面積 (mm²) 支持点間の距離 (m) 電線相互の距離 (cm) 備考
100未満 1.5以下 6以上*

① 電線を揺動しないように施設すること。

② 屈曲半径が1m以下の曲線部分の支持点間隔は、1m以下。

100以上 2.5以下

 

*印の付いているものは、トロリー線相互の間、及び集電装置(コレクタ)の充電部分と反対の極性の電線との間に、堅ろうな絶縁性の隔壁を設ける場合は、トロリー線相互の間隔を減少してもよいです。

トロリー線の固定方法に関するルール

固定方法

トロリー線は、以下のいずれかの方法で施設する必要があります。

a. 各支持点において堅ろうに固定して施設する。

b. 支持点において、電線の重量をがいしで支えるのみとし、電線を固定せずに施設する場合は、電線の両端を耐張がいし装置により堅ろうに引き留める。

がいしの選定に関するルール

がいしの種類

がいしは、絶縁強化木を使用する場合を除き、絶縁性、難燃性及び耐水性のあるものを使用する必要があります。

がいし引き配線による施設に関するルール

施設場所

トロリー線をがいし引き配線により屋内の点検できる隠ぺい場所に施設する場合は、機械器具に施設する場合を除き、前述の固定方法、がいしの選定に関する規定に準じて施設する必要があります。

電線の種類と固定

トロリー線には、山形鋼、I形鋼などのたわみ難い導体を使用し、かつ、3305-5表に掲げる支持点間隔で揺動しないように堅ろうに固定して施設する必要があります。

トロリー線相互の間隔

トロリー線相互の間隔は、12cm以上とする必要があります。

トロリー線と造営材との離隔距離

トロリー線と造営材及びトロリー線に接触する集電装置(コレクタ)の充電部分と造営材との離隔距離は、4.5cm以上に保持できるように施設する必要があります。

ただし、トロリー線及び集電装置(コレクタ)の充電部分と造営材との間に堅ろうな絶縁性の隔壁を設ける場合は、この限りではありません。

バスダクト配線による施設に関するルール

施設場所

トロリー線をバスダクト配線により屋内に施設する場合は、機械器具に施設する場合を除き、以下の要件を満たす必要があります。

バスダクトの種類

バスダクト配線に使用するバスダクトは、トロリーバスダクトである必要があります。

導体の種類と断面積

バスダクトに使用する導体は、断面積20mm²以上の帯状又は直径5mm以上の管状若しくは丸棒状の銅又は黄銅である必要があります。


(キーワード)

低圧電動機、位置、始動装置、三相誘導電動機、スターデルタ始動器、電気工事、電気技術規程、安全


設計マニュアルを作成中!