出典(内線規程(JEAC8001-2022))より
電気めっき槽の施設基準と安全対策を徹底解説
金属加工の現場では欠かせない設備の一つが「電気めっき槽」です。この記事では、電気めっき槽の正しい設置方法と、感電や火災を防ぐための安全対策について、施設基準をもとに詳しく解説します。
電気めっき槽とは?
電気めっき槽とは、電気分解の原理を活用して、金属や非金属の表面に金属の薄膜を形成するための装置です。主に耐食性や外観向上、導電性の付与などを目的として使用されます。
電源装置の施設基準
電気めっき槽に安定した電気を供給するためには、以下の基準に従って電源装置を設置する必要があります。
● 絶縁変圧器の使用
電源供給には、必ず絶縁変圧器を使用することが求められます。絶縁性の高い変圧器を使うことで、漏電による感電リスクを大幅に低減できます。
● 専用の電源装置を使用する
他の機器と電源を共用することは禁止されています。めっき槽専用の電源装置を設けることで、電源トラブルによる事故を防止します。
● 一次側電路の設置条件
一次側には、以下のような専用の設備が必要です。
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各極に開閉器と過電流遮断器を設置(※多線式電路の中性極は除く)
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ただし、過電流遮断器に開閉機能があれば、遮断器のみで可
二次側配線の施設基準
電源装置からめっき槽までの配線(二次側)にも、明確な設置基準が定められています。
● 電線の種類
使用する電線は以下のいずれかでなければなりません:
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絶縁電線
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キャブタイヤケーブル
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ケーブル
ただし、取り扱い者以外が容易に触れない構造になっていれば、裸導体の使用も認められます。
● 腐食性ガスがある場所への設置
腐食性のある雰囲気中では、配線を**「腐食性ガスなどがある場所の施設基準(3425節)」**に準じて設置する必要があります。腐食による劣化を防ぐための対策です。
接地工事の基準と例外
電気めっき槽では、感電防止や火災リスクの低減のために適切な接地工事が欠かせません。
● D種接地工事(300V以下)
低圧(300V以下)で使用する場合は、D種接地工事を行います。
● C種接地工事(300V超)
300Vを超える低圧の場合は、より強化されたC種接地工事が必要となります。
● 接地工事が省略できる例
以下の条件をすべて満たす場合、接地工事を省略することが可能です:
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槽内に金属製の水管(冷却用・加熱用など)があり、それが大地と電気的に確実に接続されている
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接地抵抗が以下の基準内である
┗ 100Ω以下(300V以下)
┗ 10Ω以下(300V超)